電力・ガス自由化 首都圏夏の陣(上)東京ガス 深キョンCMで申し込み7倍
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2016年4月の電力に続いて、17年4月には都市ガス小売りも全面自由化され、エネルギー産業は大競争時代に突入した。大消費地の首都圏は、エネルギー産業にとっても国内最大の市場。電力・ガス小売りの垣根がなくなって2年目の夏を迎え、首都圏を地盤にする...
<特別対談>勝てない新電力に足りないモノ
「日経エネルギーNext経営塾」の講師陣が明かす新電力の課題とは
山根 小雪=日経エネルギーNext2018/08/22 04:00 1/3ページ
電力全面自由化から2年。新電力にとって厳しい事業環境が続いている。事業継続が危ぶまれるほどの苦境に追い込まれている新電力も少なくない。だが一方で、苦しい中でも売上高を数百億円単位で伸ばしたところもある。この差は何から生まれるのだろうか。新電力の経営人材を育成する「日経エネルギーNext経営塾」の講師3人に、苦境にあえぐ新電力に共通する課題を語ってもらった。
厳しい事業環境でも成長している新電力と苦境にあえぐ新電力。その差はどこにある?
日経エネルギーNext経営塾の講師陣(写真:的野弘路)
村谷法務行政書士事務所・村谷敬所長:需給管理を中心に新電力のコンサルティングを手がけています。これまでに70~80社の新電力を見てきて感じるのは、「販売電力量ランキングは当てにならない」ということ。事業の巧拙は、事業規模ではなく、経験年数によるところが大きいなと。
ビジネスデザイン研究所久保欣也社長:東京電力出身で、今は新電力の設立支援などを手がけています。確かに、新電力の人は、電気事業をやろうとしているのに、ルールを知らない人が多すぎますよね。例えば、電気事業法。読んだことがない人が多過ぎます。絶版になっていますが、「電気事業法の解説」(経済産業調査会)は読んでおかなければならない必読書です。
電気事業法だけじゃない。電力広域的運営推進機関の「スイッチング支援システム取扱マニュアル」も読んでいない新電力が多い。自社の顧客を増やすには、スイッチングが必須。それなのに、スイッチング時の契約方式すら理解していない。知らないことが理由で、逆ザヤになってしまっている新電力もいるくらいです。電気事業は規制領域ですから、制度を知らないと話になりません。
I.T.I柏崎和久社長:経済産業省の「電力小売り営業の指針」(小売りガイドライン)を読んだことない人も多い。今春まで新電力エフビットコミュニケーションズ(京都府)の社長をしていたんですが、エフビットはそれまで通信が本業で、電気事業は全くのド素人からのスタートでした。
柏崎和久(かしわざき・かずひさ)氏 I.T.I代表取締役社長、エフビットコミュニケーションズ前社長、技術士(経営工学部門)
中央大学理工学部電気電子工学科卒業後、関電工に入社。バイオマス発電ベンチャー、大型蓄電池ベンチャーを経て、日本電気株式会社(NEC)へ。2017年4月に新電力エフビットコミュニケーション社長に就任。わずか1年でエフビットの売上高を倍増、利益率を大幅に向上させた。その経営手腕が買われ、2018年3月に退任後、電力ビジネスにかかわる複数企業でアドバイザーを務める。(写真:的野弘路)
ただ、周りを見渡すとそんな会社ばっかりでしたよ。みんなルールを知らない。知らないから営業力に走ってしまう。需給管理に至っては、あぶなっかしいやり方になりがちです。それでも儲かっている間はいいけれど、昨冬の日本卸電力取引所(JEPX)の価格高騰で「勉強しないとマズイ」と感じた新電力は多かったんじゃないでしょうか。
久保氏:例えば、燃料費調整額がマイナス4円の時、ある新電力の人が「燃調がマイナスだからきつい」と言っていました。燃料費調整額がマイナスになれば、大手電力会社との価格競争では有利に働きます。追い風なのに、気づいていない。燃料費調整額が上がったら、新電力は吹きとんでしまうかもしれないのですが、誤解したままです。
なぜ新電力は学ばないのか
村谷氏:全面自由化前は、電気事業は素人とはいっても、事業に携わっている人の多くが電気主任技術士とかエネルギー管理士とかの有資格者でした。ところが今では、電気の「で」の字も知らない、本当の素人が多いですよね。
柏崎氏:電気事業には精通している大手電力会社も、新電力事業のことは知らない。大手電力の人は需給管理をやったことがないですから。大手電力の方にお越しいただいて需給管理などの研修をやったことがありますが、とても好評でした。
久保氏:私は2007年に東京電力に入社して、東日本大震災の前に辞めました。東電の新入社員研修のことを思い出すと、エネットやエネサーブを知っていたのは300人中3人しかいませんでした。
柏崎氏:どうして新電力は学ばないのか、その理由を考えていました。私がたどり着いた結論は、新電力は大手電力会社へのリスペクトが足りてないということ。だって、JEPXから電源が調達できるのだって、大手電力がいるからです。大手電力の存在なしに、新電力のビジネスは成り立たない。
久保氏:ルールに加えて、電気の歴史も知らなすぎると感じています。
村谷氏:松永安左エ門を知らない人が電気事業をやったらダメですよね(笑)。電気事業の歴史には、示唆がたくさんあると思います。
久保氏:今はネットで検索すればすぐに資料が見つかりますが、東日本震災前までは本当に資料がなくて、新電力への参入障壁は高かったですよね。村谷さんは、どこで電気事業を勉強したのですか?
久保欣也(くぼ・きんや)氏 ビジネスデザイン研究所(BDL)社長
東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修了後、東京電力に入社。東電では事業開発部にて新規事業の事業化やM&Aに従事した。その後、ドリームンキュベータにて、全社的な事業拡大戦略の策定支援、技術分野での新事業開発の立案や実行支援を行った。2015年11月にビジネスデザイン研究所を設立。電力分野では新規事業の立ち上げや新電力の経営視点を手がけている。(写真:的野弘路)
村谷氏:太陽光発電の補助金がきっかけでした。行政書士をしていた時、高齢の顧客の元に悪質な業者が太陽光発電を売りに来たんです。これは理論武装しないといけない、と。地元の経済局に足を運んだりして勉強しました。そうしたら面白くなってしまって。その後、エナリスに入社し、需給管理業務を手がけるようになりました。2010年頃ですね。
久保さんの言う通り、当時は今のように資料が豊富ではなかったので、託送供給約款を読んだり、東電のIR資料を読んだりしました。東電の事業計画をさかのぼって読んでいったら、「一般家庭の自由化は2200年までない」と断じてあったり(笑)。電力会社のネットワークサービスセンターに質問することも多かったですね。すると、「この本を読んでください」と教えてもらえたりしました。勉強するという意味では、逆に良かったのかもしれませんね。
柏崎氏:よく勉強もしないで新電力事業に乗り込んだ人が多い理由は、メガソーラー事業がバブルだったからだと思います。太陽光発電所を所有したことで、「俺は電力会社だ」と勘違いしてしまった。それこそ「発電所を持っているのだから大手電力と対抗しても良いんだ」と。
こういうマインドで新電力を始めるから、どうしても勉強不足になります。もっと勉強しないといけないし、だからこそ魅力的な業界にしていかないといけない。
新電力はビジネスモデル次第で儲かる
久保氏:電力が通信に似ていると思うのは、ビジネスモデル型の事業であること。電力の場合、50年前に電気料金と電気事業法などの制度を作った人の功績です。それこそ寝ていても儲かるビジネスモデルを作ったわけです。
新電力もビジネスモデルを作ったら、規模を大きくするのは大変かもしれませんが、すぐに儲かります。やりようによっては、事業規模も大きくできる。夢のある事業だなと思います。
村谷氏:それは同感です。新電力は2年頑張ったら売上高100億円、200億円が不可能ではない。夢がありますよね。もっといろいろな企業にビジネスとして参入してほしいです。
村谷敬(むらたに・たかし)氏 村谷法務行政書士事務所所長、環境エネルギー技術研究所上級研究員
成蹊大学法学部法律学科卒。エナリス、エプコと電力自由化業界での経験を基礎に、電力ビジネスのコンサルティングを行う。これまでに約120社の小売電気事業者のビジネスに携わり、2011年以降では32社のプロジェクトを手がける。地方創生の一環としての電気事業立ち上げにも習熟。北海道から沖縄まで縦横無尽に活動する。(写真:的野弘路)
ただ、100億円、200億円の次をどうするかが問題。これまで、こういう金額のビジネスをやったことがない経営者が多いので、どんな体制が必要になるのかという感覚に欠けている。10億、20億のビジネスをしていた人が新電力を始めて、突然100億円になると、維持することしかできないから、徹底した保守主義になってしまう。これではイノベーションは起こせません。
久保氏:多くの新電力が、マーケットニーズを捉えられていないと感じます。新電力の人と話していても、聞こえてくるのは大きすぎる話ばかり。再生可能エネルギーとか、それこそ「卒FIT」とか。市場の成熟度の問題かもしれませんが。
柏崎氏:新電力事業を始めた1年目はシンプルにやろう、2年目は武器が必要だよ、と順を追って進めていく必要があると感じています。従業員の熟度が上がってこないと、やれることには限りがあります。シンプルな商材を持ち前の営業力で売るところから始めれば、電気のことを少しずつ理解していきます。そうなって初めて、他社と差別化するための武器を考える余裕がでてくる。
小売電気事業者になる必要はあるのか
久保氏:そもそも新電力、小売電気事業者になる必要性は何なのか。もっと深く考えてほしい。
村谷氏:本業の商品力がないなら、電気とセットにしたところで売れるはずがない。なぜ電気がついたら売れる思うのか。ガス会社などは良いポジションにいると思いますが、現時点では電気とガスのセット割引くらい。
私の考える理想形は、発電と小売りをセットにすること。英国のグッドエナジーのように、ブランディングにマッチした発電所を自分たちで作る。こういう人たちが生き残っていくと思っていた。そうじゃなかったら媒介でも代理でもいいんじゃないかな。
久保氏:その市場は1つ、あると思います。でも、プレミアムでニッチですよね。1兆円にいかないくらいの市場規模かな、と。市場の大部分が小売事業ではないでしょうか。営業力が売りなら、良いパートナーがいれば媒介で十分。取次になる必要もありません。小売電気事業者になるからには、別の意義があるはずです。
柏崎:事業をやる意義というのは、ものすごく重要です。事業をやるときは、まず「なぜこの事業をやるのか」を明確にしないと、すべてがブレてくる。意義を明確にして、従業員にしっかり理解してもらえば、おのずと戦略・戦術が明確になります。
エフビットの場合は、社是は「和をもって尊しとす」としました。原子力発電所事故があって、太陽光発電バブルが起きた。メガソーラーで儲かった人たちが騒いでいるばかりの電力業界ではく、秩序ある業界であってほしいと考えました。そして、エフビットはその中の1プレーヤーでありたい、と。業界を変えていく会社の1つにしていこうと、社員にも何度も何度も話をしました。
需要家は電気料金の単価に関心がない
久保氏:新電力がベンチャー企業として勝負する以上、人のモデルを真似するのは基本の1つだと思うのですが、今の新電力はあまり真似をしませんよね。例えば、新電力Looop(東京都台東区)の「基本料金ゼロ」というメニューは、分かりやすく、ユーザーに受け入れられましたが、他社は追随しませんでした。Looopがこのメニューを継続しているということは、一部逆ザヤの顧客がいたとしても、それ以上にうまく言っているという証左なんですけれどね。
全面自由化を迎えて、新電力各社は「基本料金が大手電力の○%引き」「従量料金が△%引き」というアピールをしていましたが、ユーザーにしてみたら電気の単価なんてどうでも良い話だと思うのです。その証拠に、「新規契約でキャッシュバック5000円」というキャンペーンはものすごく当たりました。
日経エネルギーNext経営塾では、電力業界のみなならず、他業界での成功事例も参考にしながら、自社に合った戦術を自力で作るための方法論を身に着けてもらいたいと思っています。
久保氏:電気の安定性が同じなら、手間がなくてコストが安いというのがユーザーにとって嬉しいこと。例えば、設備の運用保守も面倒みてあげるようなやり方が効果があると思います。複写機メーカーのビジネス展開は参考になります。昔はプリンターを売るのが仕事でしたが、その後はカウンター売りになりました。そして、今ではドキュメント周り、もしくはオフィス周り全体のソリューションを提供するようになっています。
「新電力は短期間での成長が見込める魅力的な事業」と講師陣は口をそろえる
左から久保氏、柏崎氏、村谷氏(写真:的野弘路)
柏崎氏:東電も特別高圧の需要家には、ESCOや省エネのコンサルティングを提供していますよね。省エネや運用保守は新電力にとっても、ビジネスチャンスになると思います。
村谷氏:需要家に最小限のピークカットをしてもらえば、調達改善ができます。新電力事業の収益改善をしたいなら、「調達改善メニュー」を作ったらどうですか、と提案していますが、誰もやってくれません(苦笑)。理由の大半が、社内に省エネ手法を理解させるのが難しいから。やりたいけれど、勉強はしたくない。しかも、自分の顧客の電気の使い方すら見ていない。これこそ、大手電力ができないことのはずなんですが。
柏崎氏:これは新電力の経営者として、すごく悩んだところです。教育の過程なしに営業担当者に「やってこい」と言っても、やれっこない。電気のノウハウがまったくないわけだから。だからこそ、シンプルな商品にして、「まずは1年間、このメニューを売ってこい」とい言いました。その間に少しずつ電気のことが分かってきますから。
新電力事業は決して難しくない
柏崎氏:新電力事業は、そんなに難しいものではないと思っています。日経エネルギーNext経営塾では、ド素人集団だった新電力で売上高を1年で2倍、3倍にできるセオリーをしっかり学んでほしいですね。従業員の教育も含めて、経営現場でぶつかる課題についても、共有したいと思っています
村谷氏:電力市場も、1円単位で価格を予測するのは難しいですが、ざっくりとなら予測できます。例えば、JEPXは大手電力などの余剰電気ですよね。もっとも量が多いのは東電の電気。東電の電気の多くはLNG(液化天然ガス)火力発電所で発電しています。つまり、LNG価格の変化を見れば、電力価格も見えてくる。冷静に考えれば、分かるはずなんです。
ただ、本には書いてありません。新電力事業を運営する中で、伝言ゲームで学ぶものだからです。今回の日経エネルギーNext経営塾では、電力価格を予想するための情報は何か、どうやって情報を入手するのか、どうやって読みこなせば良いのかを徹底的にレクチャーしたいと思います。
柏崎氏:新電力事業は、ちゃんとやれば利益も上がるし、今後も様々な可能性を秘めた魅力的なビジネスです。だからこそ、基本的な知識を早期に身に着けてもらいたいですね。
久保氏:新規参入組にも、勉強すれば身につく知識を早く身につけてもらって、業界全体の底上げに繋がることを願っています。
村谷氏:新電力同士の横のつながりも、もっとあって良いと思っています。そういう点でも、同じような課題に直面した新電力が、共に学び、切磋琢磨する場があるというのは良いことですよね。
電力小売における競争環境の整備、これまでの取り組みと今後検討されること
力の競争環境整備については、国がこれまで検討が進めてきており、様々な取り組みがなされてきました。また、2017年10月からは「競争的な電力・ガス市場研究会」において議論が行われており、8月には中間論点をまとめた報告書が発表されました。この記事では、これら電力小売りの競争環境に関する議論を整理します。
これまで行われてきた電力市場の競争促進を図る取組
生活必需品である電力やガスについて、自由化の恩恵は、競争的な市場によって実現します(料金の最大限の抑制や需要家の選択肢の拡大、事業者の事業機会の拡大等)。そのため、大手企業による市場支配力が不当に行使され、競争に歪みが生じることによって、料金が高止まりしたり、関連するサービスの革新が遅滞したりするような事態は避ける必要があります。
電力市場の競争促進を図る取組については、これまで各種行われてきました。旧一般電気事業者は、常時バックアップ、余剰電源のJEPXスポット市場への全量供出(限界費用ベースでの売入札)、グロス・ビディング、小売部門の予備力削減(電源開発株式会社の電源(電発電源)等)を実施してきました(図1)。
新電力、総額の7割落札 17年の道内公共施設、道外資本伸びる
道内で2017年に行われた公共施設の電力供給に関する入札で、新電力の落札額が全体の7割に達したことが分かった。道外に本拠を置く新電力が高額な案件を競り落とすケースが目立っている。電気料金の高止まりが続く中、北海道電力と新電力との激しい顧客獲得競争が続いていることがうかがえる結果となった。
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東証マザーズ上場で入札情報の提供サービスを手がける「うるる」(東京)が、省庁や自治体、国立大学法人など公共施設への電力供給に関する入札結果を公開情報などからまとめた。
17年の入札は373件で、落札総額は184億9900万円。このうち新電力が全体の73%に当たる135億3700万円で、件数は217件と58%を占めた。北電は49億6200万円(156件)だった。
「サーラの電気」 申し込み件数が3万件突破
サーラグループの小売電気事業者サーラeエナジー(豊橋市)が販売する家庭向けなどの低圧電力「サーラの電気」の申し込み件数が、7月末で3万件を突破した。
一昨年4月の電力小売完全自由化に合わせて小売販売を開始。都市ガス、LPガスなどの会社を有するグループのサービス提供機会を生かしてPRしてきた。多くの顧客が安価となる電気料金、都市ガス・LPガスとのセット割りや、クレジット機能、ポイントサービスなどがある「サーラカード」での支払いによるポイントメリットなどが評価されているという。
3万件突破に感謝し、サーラeエナジーは、利用者や新規顧客を対象に「3万件突破!ありがとうキャンペーン」を実施している。
特典は、11月分電気料金が発生する全ての顧客(高圧電力は除く)に同月分電気料金1契約につき100円(税別)を割引。サーラカード支払いの顧客には、抽選で600人に5000ポイントをプレゼントする。契約中の人と、11月18日までに申し込みをした人が対象。
また、サーラの電気を友人らに紹介し、ウェブで登録して利用が始まると、紹介者と紹介された人には1契約につきサーラカードのポイントを計3000ポイントプレゼントする。紹介受付期間は10月15日まで。
サーラeエナジーは、中部ガス(豊橋市)とサーラコーポレーション(同)が共同で設立した。
(中村晋也)
楽天、電力小売で沖縄エリア進出 新電力不毛地帯に一石を投じるか
楽天(東京都世田谷区)は8月7日、沖縄における電力小売業に進出すると発表した。
高圧・特高は9月、低圧は12月から
同社は今後、沖縄エリアを中心に、低圧、高圧・特別高圧を利用する法人に電力供給サービスを提供する。沖縄電力(沖縄県浦添市)が提供する「卸電力メニュー」を活用し安定的な電力の供給を行うとともに、楽天グループが展開する沖縄エリアの事業基盤や那覇支社のリソースを最大限活かし、電力を中心に幅広いサービスを展開していく。サービスの開始は、高圧・特別高圧電力は9月1日から、低圧電力は12月以降を予定。
同社は、2013年6月に電力を中心としたエネルギーソリューションサービス「楽天エナジー」を立ち上げ、2017年2月には、経済産業省・資源エネルギー庁による小売電気事業者の登録を受け、電力小売業に本格参入している。今回の沖縄エリア進出により、法人向け電力供給サービスエリアが全国に拡大した。具体的なサービス概要は以下の通り。
サービス対象
低圧、高圧および特別高圧の電力を利用する法人顧客。
提供サービス
低圧、高圧および特別高圧の法人向け電力供給サービス「楽天でんきBusiness」。なお、2018年8月1日より、「iシェアリングサービス」は「楽天でんきBusiness」へ名称を変更。
対象エリア
沖縄本島と電力系統がつながっている地域。対象外となっている地域は以下の通り。
栗国島、渡名喜島、久米島、奥武島、オーハ島、北大東島、南大東島、宮古島、池間島、大神島、来間島、伊良部島、下地島、多良間島、水納島、石垣島、竹富島、西表島、鳩間島、由布島、小浜島、黒島、新城島(上地)、新城島(下地)、波照間島、与那国島。
電力を起点に、グループ力を活かした事業展開も
沖縄電力が管轄するエリアは、2016年の電力自由化後も、東京電力や関西電力など都市圏の市場と比較し新電力事業者の普及が伸びないのが問題となってきた。また、卸電力市場がなく電力切り替えの環境が整備されていないこともあって、これまで新電力の「不毛地帯」とされてきた経緯がある。
この状況は、「電力・ガス取引監視等委員会」でもたびたび指摘されており、状況を改善すべく、2018年4月に経済産業省主導のもと、沖縄電力が「卸電力メニュー」を新設。これにより、楽天エナジーなどの新電力事業者が負荷追従部分への電源として同メニューを活用可能になり、従来のベースロード電源部分である「常時バックアップ契約」に加え、同メニューをミドル電源として利用できるようになった。
同社は今後も「卸電力メニュー」などを活用し、安定的な電力供給や市場の活性化・電力自由化を推し進め、健全な市場の発展に寄与していくとしている。また、沖縄エリアでは、電子マネー「楽天Edy」をはじめ、旅行予約サービス「楽天トラベル」、ゴルフ場予約サービス「楽天GORA」などを通じ楽天グループと関わりのある企業が多数あり、電力を起点とした幅広い業務提携も期待できるとしている。
リミックスポイント電力事業がエネルギーイノベーションジャパン2018 in大阪へ出展!
常に新市場に挑戦し、顧客様へ新たな価値を提供し続ける株式会社リミックスポイント(証券コード:3825、本社:東京都港区六本木3丁目2番1号、代表取締役会長 小田玄紀)(以下「当社」)は、2018年8月28日(火)~29日(水)に大阪、マイドームおおさかで開催される、スマート社会を支えるエネルギーソリューション革新的技術等が集結した業界最大のイベント「エネルギーイノベーションジャパン2018」に出展いたします。
当社の展示ブースでは主に電力事業を軸とした様々な事業支援・コスト削減提案をパッケージ化し、お客様やパートナー様へ新鮮かつ斬新なプランをご提供します。
例えば新しい取り組みとして仮想通貨関連を取り入れたご提案や高圧電力契約におけるクレジットカード決済を可能にするなど、弊社ならではの柔軟な発想のもと生まれたソリューションサービスを展示いたします。
また、会期中に同会場内にて開催されるセミナーにも登壇(8月29日(水)13:00~13:30)いたします。「ブロックチェーン・EV・IoTで花開くエネルギービジネス」と題して、最新技術を取り巻くエネルギーイノベーション分野での展望をお伝えする予定です。
ご不明な点や具体的な実績のご紹介など、個別でのご相談も随時受け付けておりますので、お越しの際にはぜひお立ち寄りくださいませ。
【「エネルギーイノベーションジャパン2018」について】
一般財団法人省エネルギーセンター主催による省エネ課題の解決や、エネルギーのコスト削減を実現する、エネルギーの専門展!省エネ、コスト削減に関する課題をお持ちの事業所や施設のエネルギー需要家をはじめ、エネルギー自由化の進展に伴う電力・ガス事業者とのビジネスマッチング、人脈構築の機会を提供します。省エネ業界では最大のイベントとなります。
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開催日時:2018年8月28日(火)~29日(水)10:00~17:00
開催場所:〒540-0029 大阪市中央区本町橋2番5号 マイドームおおさか2階
TEL :06-6947-4321
ブース:【小間番号:I-4】
展示内容; 電力小売、省エネ補助金支援、事業経費削減支援、エネルギーソリューション
「RE100」が突きつける非化石証書の弱点
「再生可能エネルギー電気の表示価値が明確に規定されているのは非化石価値証書だけ。グリーン電力証書やJ-クレジットを使って再エネ電気として扱うことは、行政としては推奨しない」
7月31日、新電力57社が集まる会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」で、再エネ電気の定義や扱いを巡って議論が交わされた。
小売電気事業者が集まる会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」の会合では再エネ電気の定義をテーマに議論した
冒頭の発言は、国内で出回る複数の環境価値証書と再エネ電気の関係を質した新電力幹部の問いに対する、資源エネルギー庁電力基盤整備課の柿原宗一郎課長補佐の回答だ。
非化石価値証書はこの5月から取引が始まった新たな制度だ。だが、非化石価値取引市場の立ち上がりを契機に、再エネ電気を巡る議論が錯綜し始めている。
エネ庁が「行政としては推奨しない」としつつも、現実にはグリーン電力証書やJ-クレジットといった環境価値証書をFIT電気などと組み合わせることで、事実上の「再エネ」として販売する事例が増えている。それらの組み合わせが、再エネ利用の推進を目指す国際的イニシアティブ「RE100」の基準に照らして、再エネ利用の条件を満たす解釈できるためだ。
世界の有力企業が注目する「再エネ価値」
現状を整理しておこう。今回の会議は柿原氏のほか、企業の温暖化対策や再エネ利用に詳しいみずほ情報総研の中村悠一郎氏、RE100のほか企業の気候変動への取り組み評価で大きな影響力を持つ国際NGO、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)日本事務局の吉岡剛シニアマネージャーの3人の専門家を招いて議論を行った。
これまで、エネルギーを利用する企業は温暖化対策としての省エネと再エネを明確に区別してこなかったが、今後は「CO2削減価値」と「再エネ価値」を分けてとらえる企業が増えるとみずほ情報総研の中村氏は指摘した。
COP(気候変動枠組条約締約国会議)がパリ協定などを通して大胆なCO2削減を国や企業に求める一方で、世界の有力企業が使用電力の再エネ100%化を目指すRE100のような国際イニシアティブを支持するようになり、再エネ調達自体が企業の評価軸として幅を利かすようになってきた。そのため、日本企業も国際的な潮流やサプライチェーンの中で果たす役割として、CO2削減と再エネ調達のそれぞれに対応が求められるようになるという。
この状況は電力を販売する小売電気事業者のビジネスにも大きく影響してくる。リコーや富士通、イオンなどRE100に参加した日本企業はもとより、米アップルや米マイクロソフトなどRE100参加企業の日本法人が国内で再エネ電気の調達を増やし始めているからだ。将来的に100%を目指す中で、電力需要家が自前で再エネに投資するには限界がある。ゆえに「小売電気事業者から再エネ電気を購入する比率が増える」(みずほ情報の中村氏)ことが見込まれる。
小売電気事業者が販売用の再エネ電気を調達する際にカギを握るのが環境価値証書だ。
国内には現在、3つの環境価値証書が存在する。このうち、グリーン電力証書とJ-クレジット(「国内クレジット制度」と「J-VER制度」を2013年に統合)は原則、再エネの自家消費を対象にしたもので、いずれもFIT以前に立ち上がった仕組みになる。「系統電力を対象にしていないことが、電気事業法上は再エネ電気として扱わない根拠」(柿原氏)というのがエネ庁の立場だ。
これに対して、この5月に取引が始まった非化石価値証書は、再エネや原子力の「非化石価値」を証書化したもので、もっぱら電気事業者だけが購入できる。エネルギー供給構造高度化法が電気事業者に課す排出係数削減目標(2030年時点で0.37kg-CO2/kWh)の達成や温暖化対策法に基づく販売電力の排出係数削減に使えるほか、「実質的に再エネ電気○%」といった電気のメニュー表示にも使えると「電力の小売営業に関する指針(ガイドライン)」に規定されている。
自家消費用発電を対象としたグリーン電力証書やJ-クレジットと異なり、非化石価値証書はFITや大型水力など国内で建設された大部分の再エネが対象になる。いわば、“本命”の登場となるはずだった。
この
福島電力が破産手続き開始/託送料金回収は不透明
福島地裁いわき支部は8日、中堅新電力の福島電力(福島県楢葉町)について破産手続きの開始を決めた。通常の手続きに沿えば今後、破産管財人の下で各債権者に対する債務を確定する段階に入るとみられる。電力各社の送配電部門も、福島電力が電力小売事業から撤退する過程で、未払いの託送費用などに関わる債権を抱えているとみられるが、どこまで回収できるかは現時点で不透明だ。
福島電力は5月18日に小売事業からの撤退を発表。発表当初は「ビジネスモデル変更のため」と説明していたが、帝国データバンクによると、債権者の申し立てを受け7月19日に破産手続きにおける保全管理命令を受けていた。正式に破産手続きが始まったことで同社の事業継続は事実上困難になった。
TOKAIとみんな電力、再生エネ地産地消へで新会社
TOKAIホールディングス(HD)は13日、再生可能エネルギー事業に本格参入するため2019年4月に新会社を設立すると発表した。新電力ベンチャーのみんな電力(東京・世田谷)と組み、電力会社への売電によらずに静岡県内などで再生エネの地産地消を進める。環境意識の高い企業などの需要を見込む。
これに先立ち、TOKAIHDとみんな電力は資本業務提携について合意した。みんな電力は全国の太陽光発電や小水力発電から電力を調達し、供給する電力がどの発電所で生み出されたかが分かるブロックチェーン技術を持つ。
新会社は同技術やTOKAIHDの顧客基盤を活用し、電力会社を介さずに再生エネでつくられた電力を直接消費者に販売する仕組みを構築する。「顔の見える電源」としてPRし、地域で発電した電力を地域で消費しやすくする。自治体や社会的責任への対応を進める企業に売り込む。
まず静岡県内と、TOKAIHDがガスやケーブルテレビ事業で基盤を持つ地域で事業を進め、ビジネスモデルの確立を目指す。将来は他地域のガス事業者などとも組んで事業エリアを広げる。19年以降、固定価格買い取り(FIT)が終わる太陽光発電の増加に合わせ、余剰電力の買い取りも進める。