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「8割が再エネ」「初年度から営業黒字」――やまがた新電力の取り組み

 山形県は、2011年3月に発生した東日本大震災の際、エネルギーの安定供給や安全性について、他の地域以上に危機感を強く感じた県の一つとなった。日本海側のため、地震津波による深刻な被災は免れたものの、県内は大規模な停電の影響を受けた。その後、福島第一原子力発電所の事故では、事故の程度と風向き次第では、放射線関連の影響を強く受ける恐れが生じた。

 この危機感から、山形県では、県内に安全・安心なエネルギー源を多く導入し、県内で使いこなせないかと考えた。その狙いに合う電源として、再生可能エネルギーに着目した(図1)。地域に分散して導入しやすく、かつ、安全・安心という目的に適う。こうした目標を実現していくために、翌年の2012年に県のエネルギー戦略を策定した。再エネを中心とする県内への新たなエネルギー源(熱源+電源)の導入では、2030年度末までに、101.5万kWの目標を掲げている。これは、ほぼ原発1基分に相当する(県のエネルギー戦略の詳細については別項参照)。

図1●山形県内に新設された再生可能エネルギー発電所の例

上は酒田港近くに立地する出力約16MWの風力発電所と約28.5MWの太陽光発電所、左下は村山市にある県営の出力1MWの太陽光発電所、右下は最上町に立地する出力1MWの木質バイオマスガス化発電所(出所:上は酒田港リサイクル産業センター、左下は山形県、右下はZEエナジー

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新電力で再エネ電力を地産地消

 再エネ発電所の導入が進めば、次はいかに地元の再エネ電力を、地元で使いこなすかという地産地消がカギになる。そこで、山形県では、県内の経済界に呼びかけ、地元に新電力を設立し、県内の再エネ発電所から電力を調達し、その電力を県内の施設や企業の事業所に供給していくような地産地消を目指すことにした。2016年4月に始まった電力小売りの自由化が、こうした事業を可能にした。

 当初の県のエネルギー戦略の最大の目的だった「安全・安心な電源」からの「電力の安定供給」に加えて、新電力を設立すれば東北電力よりも低価格の電力供給による「電力コストの削減」、関連業務のための「雇用」にも期待できる。

 こうして山形県や地元企業が出資して設立したのが、やまがた新電力(山形市松栄)である。調達先には、ベース電源となるバイオマス発電所に加え、日中に発電量が増える太陽光発電所を多く確保した。同社では、これらの取り組みを、山形の産官が一体となって進めている利点があるとしている。

 ここでは県の協力が大きく、2016年の事業開始後から、供給先を多く確保でき、安定して事業を立ち上げることができた。それほど多くの電力を使わず、しかも、夕方以降はほとんど電力を消費しないタイプの公共施設――学校や、総合支庁をはじめとする県有や県内市町村の様々な事務関連施設――を中心に電力の供給先を確保し、新電力の経営を安定させやすい体制を構築したことが大きかった。夜間や土日祝日に電力を多く使うタイプの施設が供給先に入ると、新電力の運営の負担が増す。夕方から早朝までの負荷が少ない学校や総合事務所は、ベース電源と太陽光発電による電力で多くを賄う計算が立てやすいため、新電力の収益の早期安定を目指しやすくなる。

 調達先の太陽光発電所についても、県内初のメガクラスとなった発電所など、県内のその後の大規模な太陽光発電所の参考になる開発や運営を目指した発電所を含んでいる。

 県の浄化センター(天童市大町)の敷地内に立地する出力1995kWの太陽光発電所は、県内初となったメガクラスの太陽光発電所である(図2)。開発・運営しているのは、下水処理施設の維持管理などを手がける山形環境エンジニアリング(寒河江市高田)の子会社、POWER E NEXT(パワー・イー・ネクスト、天童市中里)である。

 ここでは、太陽光パネルは3種類を導入し、パネルを固定する角度も20度、30度、40度に分けている。太陽光パネルを固定する基礎と架台も2種類を使い分け、比較的積雪が多く、かつ日照時間の少ない地域において、太陽光パネルの違いや設置角の違いがどの程度、発電などに影響するのかを測定するためだ。県内で太陽光発電所を開発する企業に対して、検討材料を提供するという狙いがあるという。

図2●浄化センター内の太陽光発電

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山形県から土地を借り、やまがた新電力の出資者の1社であるPOWER E NEXTが開発・運営(出所:上はPOWER E NEXT、下は日経BP

 県の企業局が、村山市にある旧・園芸試験場の土地を活用して開発・運営している出力約1000kWの太陽光発電所も、3種類の太陽光パネルを導入し、異なる設置角で固定し、同じように後続の開発の参考にしてもらおうという意図がある(関連記事)。

県内に導入された再エネ電源を、いかにうまく使いこなすという役割を担うやまがた新電力は、事業開始から2年以上を経過している。現在は高圧の電力を取り扱い対象としている。

 資本金は7000万円で、県が33%(約2340万円)を、残りを県内の18社が出資して設立された。県によると、「エネルギー戦略の具現化が目的で、それに資する経営をしてもらいたい。このために、特別決議に拒否権が発動できる出資比率とした」としている。

 やまがた新電力の特徴は、調達先の再エネ電源の多さにある(図3)。調達先の電源の約8割を再エネ発電が占めている。また、業務は出資企業で分担して受託し、専従者を置かず、運営コストを抑えていることも特徴となる。

 調達先となる再エネ発電所も、当初から合計出力29MWと多く確保できていた(図4)。ベース電源となるバイオマス発電では、鶴岡市にあるバイオマス発電所の出力1600kWのうち、900kW分を購入している。このほかでは、太陽光発電所が20カ所・合計出力2万2879kWあり、日中には太陽光発電が多く加わる。2017年4月にはベース電源となる水力発電所が、2018年8月には出資者の大商金山牧場が運営している出力500kWのバイオガス発電所も加わる。調達先の合計出力は3万1500kWに増えた。

図3●調達先の約8割が再エネ

再エネ比率の高さが特徴(出所:やまがた新電力)

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図4●調達先(上)と供給先(下)

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供給先の増加に合わせて、再エネ発電所の調達先を増やしていく(出所:やまがた新電力)

 これに対して、2018年8月時点で供給先は118施設・合計約1万8196kWと、現状では調達電力が大幅に上回っている。このため、太陽光発電所と風力発電所の調達先は、事業開始以後、増やしていない。供給先は、県有施設が90カ所、市町村有施設が17カ所。2018年8月に大商金山牧場の施設が1カ所加わり、民間施設が11カ所に増えた。

 現在の課題は、供給先を増やすこととなる。調達先の再エネ発電所の合計出力が、供給先の合計に比べて2倍近く多い。この再エネ発電所からの供給を多く確保できている一方、供給先の増加が十分には追い付いていない。

 そこで、2018年度からは、代理店制度を開始した。従来の公共施設の供給先に加えて、企業の施設の供給先を開拓していく。やまがた新電力への出資企業のうち6社(山形パナソニック、大商金山牧場、野口鉱油、メコム、POWER E NEXT)と、出資企業の親会社1社(山形環境エンジニアリング)が代理店の活動を始め、企業の施設などの供給先を拡大していく。

 出資企業の施設では、低圧の電力の施設が多いため、やまがた新電力からの買電に切り替えている企業は3社にとどまっている。2018年秋から、企業向けの低圧の供給も開始する予定で、新たな需要を取り込んでいく。

新電力の運営の中で、検討すべき課題も出てきた。一つは、「FITのインバランス特例制度」に関するものだった。

 電力小売りが自由化される以前は、FITに基づく再エネ発電電力は、一般電気事業者(山形県の場合は東北電力)が全量を買い取っていた。これに対して、電力小売り自由化後、新電力などの小売電気事業者が調達契約を結んだ再エネ発電所については、発電電力のすべてを小売事業者が買い取ることを前提としている。

 望ましいのは小売電気事業者ごとに、その需給を同時同量に調整していることだが、現実的には小売電気事業者1社の単位で実現することは難しい。そこで、小売電気事業者は事前に提出した調達先の発電量と需要量の計画と、当日の実績を30分単位でズレを3%以内に抑えれば良いという決まりがある。

 もし30分単位の需給の一致を達成できなかった場合には、一般電気事業者がその代わりに不足する電力を供給する、あるいは供給過剰となった電力の分だけ需給調整用の火力発電を炊き減らしするといった対応を取る必要がある。この状況が生じると、小売電気事業者には、インバランス料金の支払いというペナルティが課される。

 この需給の一致を実現するには、需要と供給の予測や電力卸市場の活用など専門的な知見が必要になる。そこで、多くの新電力などの小売電気事業者では、複数社がまとまり、より大きな単位で調整して実現しやすくしている。こうした新電力などの小売電気事業者のグループを、バランシンググループ(BG)と呼ぶ。できるだけ多い小売電気事業者によるBGの方が、この調整は容易になる。

 こうしたBGに組み込まれた新電力などの小売電気事業者による、FITに基づく太陽光・風力発電所からの電力調達に関する制度が「FITのインバランス特例制度」である。特例制度(1)と、特例制度(2)という二つの種類があり、再エネ発電所による発電量の計画の作成、インバランスが生じた際のリスクの取り方や精算方法などが(1)と(2)で異なる。

 大まかに、調達先の太陽光・風力発電所の発電量の計画は、特例制度(1)の場合は一般電気事業者が作成し、特例制度(2)の場合は小売電気事業者や再エネ発電所が作成する。

 この計画発電量と実際の発電量の差も、インバランスの対象となる。これも含めたインバランスとなった余剰あるいは不足分の電力に関する取引や精算は、一般電気事業者と小売電気事業者などの間でやり取りされる。最終的には、特例制度(1)の場合、回避可能費用によって精算される。一方、特例制度(2)の場合は、インバランス料金で精算される。

 特例制度(1)は、発電量の計画は一般電気事業者が担い、インバランス分の太陽光・風力発電電力は回避可能費用で精算される。この両方によって、インバランスのリスクなしに新電力が太陽光・風力発電電力を導入できるとされている。

 特例制度(2)は、発電量の計画を新電力が作成し、インバランス分の太陽光・風力発電電力はインバランス費用で精算される。再エネ発電量の予測や需給調整の実力を十分に備える新電力にとっては、こちらの方が望ましい。

 やまがた新電力は、特例制度(1)でスタートした。事業を始めてみると、特例制度(1)ならではの二つの要因によって、特例制度(2)だった場合の方が、想定していた以上に事業性が高まった可能性がある状況が生じているという。その一つは、インバランス時の精算に関するもので、やまがた新電力の場合、日中の太陽光発電電力と需要の差が大きい(図5)。この余剰分の太陽光発電電力の取引や精算に関して、特例制度(2)の利点が予想以上に多い状況にあるという。

図5●日中の太陽光発電電力が余る

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3カ月ごと(上)と6月のある日(下)の需給の状況(出所:やまがた新電力)

 もう一つは、東北電力による太陽光発電電力量の計画と実際の発電量との乖離が、予想よりも大きいことだった。実際に比べて、東北電力による計画値は、大幅に低いことが少なくなかった。これも特例制度(2)であれば、より実態に近い発電量を自ら計画でき、事業性がより高まった可能性が高いとしている。

 この太陽光発電量の計画値に関しては、その後改善されたとしている。また、やまがた新電力では、出資会社に委託している総務や経理などの業務を自社内に取り込むことを検討している。これが実現すれば、同社にとって初めての専従者を採用することになる。

やまがた新電力の収支面では、供給先と同じように、BGなどへの支払いや精算は翌月、調達先の再エネ発電所への支払いも翌月となっており、資金サイクルの期間に極端な差はない構造になっているという。ただし、FITの賦課金分の収入は、3カ月後と期間が長い。

 こうした状況の中、同社では、資金については、金融機関からの融資も受けながら回しているとしている。

 2016年度は営業利益が約4100万円の黒字で(図6)、2017年度は約5500万円と黒字が大幅に拡大した。

図6●初年度から営業利益を黒字に

専従者を置かない体制が寄与した(出所:やまがた新電力)

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 供給先の増加による収益の増加が課題となる中、専従者なしで運営するなど最小限の体制で運営していることが奏功しているとしている。

 同社の場合、県が最大株主という公益性の強さに特徴があり、営業利益の確保は重要だが、山形県全体の産業や雇用、電気料金の低減といったより広い還元が重要となっているという。

大雪で発電量ゼロの太陽光発電所も

 山形県は、冬には雪が積もる地域である。その中で、調達先の多くが太陽光発電所となっている(図7)。積雪時の電力調達や供給は、雪によってどの程度、影響を受けているのだろうか。

図7●多く積雪した時の浄化センター内の太陽光発電所の例

太陽光パネルを固定する角度によって、パネル上の積雪状況が異なる。この時の積雪状況では、奥は設置角が30度で、パネル上から雪が滑り落ちている一方、手前の20度のパネル上には滑り落ちずに残っていた(出所:POWER E NEXT)

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 冬季はまず、電力需要が夏より多くなる。暖房で電気を多く使うためである。そして、雪が積もると、調達先の太陽光発電所の多くで、太陽光パネル上に雪が積もることによって発電量が減ったり、中には、全く発電しなくなってしまう太陽光発電所もあった。

 特に、2017~2018年の冬は、日本海側の他の地域と同じように、例年より雪が多く積もる日が少なくなかった。しかも、内陸部などでは気温も低くなった。太陽光パネルの上に積もった雪が、低い気温の中で凍ってしまうこともあった。

 積雪地域の太陽光発電所では、住宅の屋根を大きく傾けて雪を滑り落ちやすくしているのと同じように、太陽光パネルを20度、30度、40度などと大きく傾けることによって、パネル上に雪が積もっても、滑り落ちやすいように設計されている。

 しかし、多い積雪と低温が重なり、太陽光パネル上で滑り落ちる前に、凍って固まってしまえば、なかなか滑り落ちなくなる。これによって、発電しない時間帯が、例年よりも多くなった調達先の太陽光発電所が多かった。

 こうした時に、太陽光発電電力の計画量と実際の発電量の差や、需要との差による不足分は、BGから購入したりインバランス料金を支払って賄う。この費用は、市場価格と連動している。ほぼ市場価格が安価な時期だったために、収支面で大いに助かったとしている。

 山形県が策定したエネルギー戦略は、今後20年間のエネルギー政策の基本的な枠組みを示す「エネルギー政策基本構想」と、この基本構想の実現に向けた今後10年間の具体的な政策の方向を示す「エネルギー政策推進プログラム」からなる。

 目指す姿は、再エネを中心としたエネルギー供給基盤を県内に整備し、エネルギーを安定供給できるようにするとともに、再エネを地域でうまく使いこなしていくことにある。再エネは地域に分散しやすい特徴があることから、関連産業の振興や地域の活性化にも期待している。

 記事冒頭でも述べた通り、再エネを中心とする県内への新たなエネルギー源(熱源+電源)の導入では、2030年度末までに、ほぼ原発1基分に相当する101.5万kWの目標を掲げている(図8)。

 2017年度末の時点で、2030年度末までに87.7万kWという電源導入の目標に対して、2017年度末時点で稼働済み(22.2万kW)と開発計画の決定分(23.4万kW)を合わせて45.6万kWと、目標の半分以上(52.0%)がすでに実現、または実現のめどがついている。

 計画では、風力発電の比重が大きい。再エネ発電の中でも、山形県風力発電に向く地域として知られる。全国有数の風況の良さが生きる。そこで風力発電を多く導入することを目指した。導入目標は、2030年度末までに45.8万kWと、太陽光発電の30.5万kWより大幅に多い計画を掲げている。ただし、風力発電は、候補地における長期にわたる調査が必要など、計画の開始から着工までに期間を要する。主に、風況の調査と、環境影響評価(環境アセスメント)の期間が長い。周辺地域の利害関係者との協議も長引く傾向にある。

 このため、2020年度までに31.2万kW、2030年度末までに45.8万kWという目標に対して、2017年度末時点で7.4万kW(稼働済みが2.0万kW、計画決定分が5.4万kW)で、進捗率は16.2%にとどまっている。開発計画自体は少なくないものの、開発期間が長いという特性ゆえに、稼働済みや開発計画が決定した発電所はまだ限られている。

 山形県では、こうした風力発電の導入促進策として、適地に関する情報公開のほか、県内の市町村と発電事業者が連携して事業化を目指している風力発電所に対する支援や、県による内陸部の適地における風況調査などを実施している。

 市町村と発電事業者が連携して開発している風力発電所への支援については、市町村にも主体的に取り組んでもらいたいという狙いから実施しているという。事業可能性調査(フィージビリティスタディ)への助成のほか、アドバイザーを派遣する。

 また、県のエネルギー戦略で想定している風力発電は、陸上を用地とする発電所だけとなっている。一方で、近隣の秋田県青森県では、洋上の風力発電所の開発が盛んになっている。そこで、山形県でも、洋上風力発電の導入可能性の研究に着手した。洋上の風力発電が実現すれば、風力発電の導入の可能性がより増える。

 開発計画が決定済みの陸上の風力発電所には、県による出力約6900kWの案件が含まれている。酒田市の十里塚海岸の遊休地を活用したもので、出力2300kWの風車を3基並べる。2019年5月ころに着工する予定となっている。

 この風力発電所は、東北電力との連系協議において、蓄電池の併設を求められた。出力変動の抑制を目的とするものとし、容量は約7000kWhを予定している。

 県によると、連系協議において、最終的には蓄電池を併設する要件が外されることになった。それでも、当初の計画通りに蓄電池を併設して運用する予定とする。今後、近隣地域で風力発電所を事業化しようとしている発電事業者にとって、実際の風況と発電量の関係だけでなく、出力抑制の参考になるデータも提供できる発電所になるとしている。

 導入計画量が多い一方、事業化までの期間が長い風力発電に変わって、導入計画の進捗率を引き上げているのは、やはり太陽光発電となっている。

 太陽光発電は、2020年度末までに22.8万kW、2030年度末までに30.5万kWという目標に対して、2017年度末時点で28.8万kW(稼働済みが18.3万kW、計画決定分が10.5万kW)となっている。進捗率は94.4%とほぼ達成が近づいている。

 バイオマス発電にも期待を寄せる。県内の土地の約7割は森林で、間伐材を燃料に使う木質バイオマス発電所がこうした地域に建てば、電源としての役割だけでなく、長年の課題となっている林業の活性化も引き起こせるのではないかと考えた。

 一方で、臨海部には酒田港があり、陸揚げ拠点として活用できることから、臨海部には、輸入材を燃料に使うバイオマス発電所の進出にも期待している。

 木質バイオマス発電所については、稼働済みが5カ所、開発中が4カ所ある(図9)。このうち山間部の県内産の間伐材を主燃料とする発電所は6カ所・合計出力20万kWある。現状では、この計画分の県内産材を確保するだけでもギリギリの状況が近づいているようだ。

 このほか、中小規模の水力発電についても、中小水力発電は、すでに2030年度末までに2.0万kWを実現できるめどがついた。

温泉組合が共同で給湯設備を導入

 計画では、電源だけでなく、熱源も対象としている。熱源については、電力の後を追う形で導入や活用を本格化していく。 木質バイオマス燃焼機器(ストーブやボイラー)に対する県の補助金もあり、例えば、バイオマス熱は2030年度末までに3.4万kWの目標に対して、2017年度末時点で2.9万kW(稼働済みが2.9万kW、計画決定分が0.1万kW)と進捗率は高い。

 このほか、熱利用については、FITの対象にならないこともあって、利活用研究から事業可能性調査の調査費、導入までの段階ごとに助成している。地中熱だけでなく、温泉熱、雪氷熱の利活用研究も支援している。

 温泉熱では、珍しい事例もある。鶴岡市湯野浜温泉組合の12施設がまとまり、共同の給湯設備を導入したことである(図10)。地域の温泉組合で共同設備を導入するのは、全国であまり例がないという。2016年度の環境省の事業で整備した。

図10●温泉組合がまとまり共同で給湯設備を導入

全国でも珍しい例という(出所:山形県

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 温泉旅館などの施設では、2種類の湯を使う。一つは温泉の湯、もう一つは給湯設備を通じたシャワーなどで使う湯である。温泉旅館では従来、温泉の湯は各旅館で沢水などの冷熱を使って適温に下げ、一方、給湯も各旅館で重油のボイラーで加温した湯を使っていた。

 これを、共同のシステムによって、給湯用の水との熱交換によって、温泉の60度の湯を適温の43度に下げながら、給湯用の水は15度から適温の40度に加温できるようにした。これによって、給湯用の重油ボイラーを不要にした。給湯用の湯は、配管システムで各旅館に供給する。