電気の環境性やストーリーに注目を ― 「RE100」検討の企業向け新電力ガイド
企業活動で使用する電気を、再エネなどに変えることは環境経営の第一歩。電力の自由化が進み新電力が数多く登場する中でその選択肢は多種多様に増えている。そこで新電力の研究を行う京都大学プロジェクト研究員 稲垣 憲治氏にRE100の加盟やSBTを検討する企業向けの新電力の選び方について寄稿してもらった。
環境・社会・企業統治を重視するESG投資などの流れにより、持続性のある事業活動のため、環境性にこだわった電気の選択が拡大しています。その象徴は、企業が使用する電力を100%自然エネルギーに転換することを支援する国際的なイニシアチブ「RE100」への相次ぐ日本企業の加盟です。日本で初めてリコーが参加したのを皮切りに積水ハウスなどが続き、日本では大手7社が登録されており(2018年5月30日現在)、今後更なる増加が見込まれる状況です(世界ではアップル、グーグルなど約130社が登録)。これらRE100に参加する企業の多くは、温室効果ガス削減目標を設定しており、その一環として再エネ電気の調達目標を定め、RE100に参加しています。
表1 RE100登録の日本企業一覧
企業名 再エネ電力活用目標
株式会社リコー 2030年までに少なくとも30%、2050年までに100%
積水ハウス株式会社 2030年までに50%、2040年までに100%
アスクル株式会社 2025年までに本社及び物流センターで100%、2030年までに子会社を含めたグループ全体で100%
大和ハウス工業株式会社 2030年までに使用電力量を上回る再エネ供給(売電)を図り、2040年には当社グループの使用電力を100%再エネで賄う
ワタミ株式会社 2035年までに50%、2040年までに100%
イオン株式会社 2050年までに100%
城南信用金庫 2030年までに50%以上、2050年までに100%
電気の環境性の指標は、排出係数と再エネ率
環境性の高い電気の選び方の指標として、(1)排出係数(2)再エネ率があります。まず、排出係数については、毎年、環境省と経済産業省が共同で小売電気事業者ごとの排出係数を公表しています。公表されている最新の2016年度実績では、6社が排出係数(調整後)ゼロとなっています。また、排出係数ゼロの電源を切り出し、電気メニューを作る動きも出てきています。例えば、東京電力エナジーパートナーが、大規模水力発電所を主力電源とした排出係数ゼロの電気として、高圧需要家向けの「アクアプレミアム」、低圧需要家向けの「アクアエナジー100」を販売しています。また、エネットもFIT対象となっていない小水力発電等のCO2排出係数がゼロの電気を活用した「グリーンメニュー」を限定的に提供しています。
次に、再エネ率については、各小売電気事業者が公表する電源構成から確認できます(電源構成は公表義務がないため、確認できない場合もあります)。例えば、プレミアムグリーンパワーは、ウェブサイトにおいて電源構成を「再エネ電源比率+リサイクル電源比率」94%(2016年度実績)と打ち出しています。
なお、FIT電気の環境価値は賦課金を支払う需要家に帰属すると整理されていることから、FIT電気の排出係数(調整後)は火力発電なども含めた全国平均の排出係数となることに注意が必要です。