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[攻防 電力・ガス自由化]四国電力、10月に新料金/電化で最大1割安く

◆再エネ100%プランも

 四国電力は31日、家庭向け新料金プランとして、「でんかeプラン」と「再エネプレミアムプラン」を10月1日に導入すると発表した。電化住宅の普及拡大を狙った「でんかeプラン」は、IH、エコキュートなど電化機器の設置により料金を最大10%割り引く。「再エネプレミアムプラン」は、環境に関心の高い顧客向けに再生可能エネルギー100%の電気を提供する。いずれもきょう3日から申し込みを受け付ける。

 「でんかeプラン」は基本料金と電力量料金の合計額から、IHを設置すると5%、エコキュートなど電気給湯機を設置すると5%を割り引く。両方設置していれば「でんか割」として10%の割引が受けられる。9月1日から年末にかけて、新規加入者向けのキャンペーンも展開し切り替えを促す。

TOKAI Research Memo(4):再生可能エネルギー事業を2019年4月より子会社を設立して始動

■今後の見通し

1.再生可能エネルギー事業の取り組みについて

2018年8月13日付でTOKAIホールディングス<3167>は、新電力会社のみんな電力と資本業務提携を締結し、再生可能エネルギー由来の電力販売等を行う100%子会社を2019年4月に設立し、事業化に向けた検討に着手したことを発表した。2019年以降、電力の固定価格買取制度(FIT)による買取期間が終了する太陽光発電設備の電力を買い取り、新設する子会社で販売していくことになる。実際の販売はグループ会社や地域の工務店などの代理店も活用していく。

まずは静岡県内の法人・個人、公共施設向けなどへ販売し、その後、同社のCATV等のサービスエリアに販売エリアを拡大していく予定にしている。また、再生可能エネルギー由来の電力販売を全国のガス事業者やCATV事業者とのアライアンス施策として積極的に活用するなど、M&Aのフック役としての役割にも期待している。

みんな電力の特徴は自社の電力取引プラットフォームにブロックチェーン技術を実装し、電源由来証明(どの電源の電力を購入したのかの証明)の発行や、個人・企業間での電力直接取引など先進的なサービスを実現可能にしていることにある。特に、電源由来の証明に関しては環境意識の高い法人・個人向けに需要があると見られる。ここ最近ではESG(環境・社会・ガバナンス)に対する取組みを強化する企業が増えてきており、RE100加盟企業※等の環境意識の高い法人や自治体向けに再生可能エネルギー比率100%のプレミアムプランのメニュー化も検討していくとしている。具体的な事業計画の発表は2018年11月に予定している。

※RE100:使用する電力の100%を再生可能エネルギーにより発電された電力にすることに取り組んでいる企業が加盟している国際的な企業連合。2018年5月時点で世界132社が加盟しており、日本ではリコー<7752>やイオン<8267>、アスクル<2678>など7社が加盟している。

2019年3月期業績はCATV事業等の好調持続で2期ぶりに過去最高益を更新する見通し

2. 2019年3月期の業績見通し

2019年3月期の連結業績は、売上高が前期比5.1%増の195,600百万円、営業利益が同27.2%増の13,960百万円、経常利益が同24.0%増の13,880百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同19.6%増の7,920百万円と期初計画を据え置いている。売上高は2期連続増収で5期ぶりに過去最高を更新、利益ベースでは2期ぶりに過去最高を更新することになる。

営業利益の増益額は約30億円となるが、その内訳は2018年3月期からの顧客件数増加に伴う増収効果で21億円、2018年3月期に投下した顧客獲得コスト等の先行コストの減少で8億円となっている。2019年3月期も顧客件数の増加に取り組んでいく方針で、2021年3月期に向けた成長の基盤づくりを進めていく方針だ。なお、2019年3月期末の顧客件数は前期末比65千件増の2,941千件を見込んでいる。

なお、第2四半期以降のリスク要因として、LPガス事業の収益悪化リスクが挙げられる。夏場の気温が高めで推移したことで第2四半期も単位当たり販売量の減少が想定されるほか、原材料価格の上昇傾向が続いており、価格転嫁までのタイムラグによる原価率上昇で、同事業の収益が計画を下回るリスクがある。ただ、第1四半期同様、CATV事業の好調が続く見通しであることから、通期計画の達成は可能と弊社では見ている。

主要3事業の業績見通しについて見ると、ガス及び石油事業については、顧客件数の増加により売上高で前期比3%増収を見込む。営業利益は顧客件数の増加による利益増で9億円、解約防止コストの減少で5億円の増益となる一方で、単位消費量の減少で3億円、エリア拡大による拠点コスト増で1億円の減益を見込み、全体では10億円の増益を見込んでいると見られる。新規顧客獲得件数は前期の47千件から60千件まで増やすことを目標としている。2018年3月期に新規進出した岡山県岐阜県、2018年6月に進出した福岡県での顧客獲得が期待される。なお、2020年3月期には新たに三重県や長野県への進出も予定している。

情報及び通信サービス事業については、売上高で前期比3%増収を見込む。法人向けについては順調に伸びるものの、コンシューマー向けが顧客数減少に伴い伸び悩むと見ている。一方、営業利益については「LIBMO」や光コラボの販促費減少及び法人向けの増収効果により2ケタ増益を見込んでいるようだ。

CATV事業については売上高で前期比7%増収、営業利益で2ケタ増益となる見通し。顧客件数は前期末比29千件の増加を見込んでいる。第2四半期以降も放送・通信のセット契約率上昇により、収益性向上が期待される。

レオパレス21、アパート入居者向け電力の提供開始

株式会社レオパレス21は、H.I.S.グループのハウステンボス株式会社の子会社「HTBエナジー株式会社」と、電力小売に関する業務提携について合意し、アパート入居者向け電力の提供開始すると2018年8月30日に発表した。

アパート契約と同時に電力契約が可能に

レオパレス21では、単身向け賃貸アパートの運営管理を行っており、全国約57万戸の管理戸数を有しており、現在、地球環境にやさしい社会の実現を目指して、管理物件共用部のLED化によるCO2削減や、グループ会社「株式会社レオパレス・パワー」による再生可能エネルギー発電事業に取り組んでいる。

HTBエナジー株式会社」では、2016年4月より全国で小売電気事業に取り組み、需要家数が10万件を突破しており、電力供給に加えて省エネ商材の取り扱い、生活トラブル手助けサポートサービスの提供、エイチ・アイ・エスの旅行割引サービスなどさまざまなサービスも合わせて展開している。

レオパレス21と「HTBエナジー株式会社」は今回、業務提携を通じて、全国189店展開中のレオパレス21直営店舗でアパート契約する際に、「HTBエナジー株式会社」が供給する低価格な電力契約をアパート契約と同時に申し込めるように、2018年10月1日よりするとのことだ。

また、レオパレス21のパートナーズ店舗(フランチャイズ)116店についても、順次、申し込みを開始する予定で、「HTBエナジー株式会社」は業務提携を通じて今後、電力供給以外のエネルギーを切り口としたサービスについても提供していくとしている。

中部電、ホテルに参入 名古屋・栄に複合ビ

中部電力はホテル市場に参入する。全額出資子会社の中電不動産(名古屋市)が3日、名古屋の繁華街である栄地区でホテルと商業店舗の複合ビルを建設すると発表した。電力小売り自由化で本業のエネルギーは競争が激しくなっており、収益源の多様化を目指す。

地上16階建ての複合ビルを2019年3月に着工し、20年11月に開業する予定。投資額は未定。市営地下鉄矢場町駅から徒歩7分の場所にあり、商業施設「ラスキーオンザパーク」の跡地で現在はコインパーキングになっている。敷地面積は1220平方メートルで、延べ床面積は8090平方メートル。

1~2階が商業フロア、3階以上がビジネスホテルとなる。福岡地所グループのエフ・ジェイホテルズ(福岡市)が運営するビジネスホテル「ホテルフォルツァ」が中部地区に初進出する。客室数などは検討中という。商業フロアは店舗面積970平方メートルで、1社に1~2階をまとめて貸し出すか、区画を分けて貸すか検討している。

栄地区では百貨店の丸栄が閉鎖した後の跡地開発や、中部日本ビルディング中日ビル)の建て替え計画などが進む。名古屋駅地区では27年のリニア中央新幹線の開業をにらんで大型ビルの建設が相次いだが、栄地区でも再開発が活発だ。中部電は不動産開発の日本エスコンと資本業務提携するなどグループ全体で再開発に注力する。

四国電力が新事業を相次ぎ打ち出している。四国では人口減少が加速する中、2016年4月の電力小売り全面自由化を契機に競争が激化し、電力販売の伸びは期待しにくい。伊方原子力発電所の司法による運転差し止めも追い打ちをかけ、四国電の連結売上高の8割以上を占める電気事業の収支環境は厳しさを増していることが背景にある。 「目減りする電気事業にかわる収入源を得たい」。四国電の佐伯勇人社長は30日、同社初のベン

経済産業省認可法人、電力広域的運営推進機関(広域機関)は29日、大手電力の供給エリアを越えて送電する電力について、10月から全量を日本卸電力取引所(JEPX)経由にすると発表した。これまでは発電側と小売り側の相対取引が中心だったが、発電所を持たない新電力などが電気を買いやすくなる可能性がある。

地域をまたぐ送電線のルールを改定する。送電線は「先着優先」と呼ばれる制度がある。利用を先に申し込んだ事業者が使えるようになっているが、地域間の連系線ではこれを改める。

送電線では太陽光や風力発電の増加を背景に空き容量不足が課題だ。稼働していない原子力発電所などが枠を占有している非効率さを指摘する声があり、この点についても経産省や広域機関が見直しを進めている。

関電、子供の見守りサービス参入 高齢者安否確認も年内導入へ

関西電力が、スマートフォンに子供の最新の位置情報や移動履歴を通知する見守りサービスの提供を新たに始めることが28日、分かった。IT企業のビーサイズ(横浜市)と提携し、関西エリアの顧客を中心にサービスを売り込む。同様の事業には中部電力中国電力がすでに参入。電力・ガスの小売り全面自由化以降の厳しい競争環境の中、暮らしに役立つサービスを充実させる動きが電力業界で広がっている。

新たなサービスは、全国で利用可能で有料。小型の専用端末を子供に持たせることで、位置情報や移動履歴をスマホのアプリを通じてリアルタイムで確認できる。

 登校時間や下校時間などを知らせる機能があり、人工知能(AI)が自宅や学校、塾など子供が頻繁に訪れる場所を学習する。近くサービスの受け付けを始める。

 関電は見守りの対象者として、毎日の行動パターンが決まっている小学生などを想定しているが、高齢者の見守りにも活用できる。

 衛星利用測位システム(GPS)や携帯電話の基地局の電波を利用するため、対象者が屋内や地下にいても位置の特定は可能という。

 関電は昨年1月、家庭で普及が進むスマートメーター(次世代電力計)を活用し、主に高齢者宅で電気使用量が極端に減った際などに家族に異変を知らせるサービスをスタート。需要があったことから、屋外でも利用できる見守りサービスを検討していた。

 関電はスマートメーターを使った異変の通知サービスについても、家族からの要望があった場合に高齢者宅などに駆けつけ、安否を直接確認するサービスを年内にも導入する方針。

 共働き世帯の増加に伴って、見守りサービスの市場は今後も拡大するとみられ、警備業界だけでなく、電力会社やガス会社、鉄道会社からの参入が相次いでいる。

【インタビュー】「エネルギーの自由化はなぜ必要なのか?」―山内弘隆 氏(前編)

日本の電力・ガスシステム改革の目的とは

―そのような中で、日本の電力・ガスシステム改革はどのような特徴を持っているのでしょうか。

山内 日本で電力・ガスに関するさまざまな改革が始まったのは1995年からのことです。日本の電力システムは以前から民営で、民間企業が発電・小売・送配電のすべてを担っている、どちらかと言えば欧州より米国に近いものでした。ただ、日本は米国と異なり国土が狭いこともあって、地域独占型の一般電気事業者(発電から送配電まで担う従来型の電気事業者)が存在していました。

この電力・ガスシステム改革の最大の目的は、競争が可能な分野については競争を促すことで、効率性向上やコスト削減を目指すことです。ただ、改革開始当初は、企業や工場など大規模なエネルギーが利用される分野では競争が可能だが、家庭向けエネルギー分野では事業者間の競争を起こすのは難しいのではないかと考えられていました。

ところが、家庭向けエネルギーの自由化は当面見送るという方向に進みつつあった2011年、東日本大震災が起こり、それに伴って東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生しました。このことによって、電力・ガスシステム改革に新たな観点が加わりました。

それはまず、社会的リスクをできるだけ小さく抑えるため、大規模集中型のエネルギー供給システムから、分散型や地産池消の供給システムへと移行することが望ましいのではないかといった観点です。また、さまざまなリスクをはらむ原子力発電やCO2を多く排出する化石燃料よりも、再生可能エネルギーを利用すべきではないかという議論も広がりました。つまり、東日本大震災とそれに伴う原子力発電の事故から得た反省を、電力・ガスシステム改革の中で活かそうという気運が高まったのです。

時を同じくして電力分野では、「スマートメーター」や「HEMS・BEMS」、「スマートグリッド」などのさまざまなイノベーションが登場してきました。これらは、エネルギー消費面でのデジタル化、スマート化を促進するものです。また、電力に必要とされる「同時同量性」(需要の量と供給の量を一致させること)を制御できる技術を発展し、活用すれば、発電事業・小売事業・送配電事業を分割しても適切な電力の運用が可能になることが明らかとなりました。こうした革新的な技術を電力・ガスシステム改革に活用することで、さらなるイノベーションの誕生を促すべきであるという議論も高まりました。このような観点も加わって、現在の電力・ガスシステム改革が進められています。

適正な競争を促し、従前の組織が持っていた良さを引き継ぐための制度作り

―インフラ事業を市場に任せてしまうと、過当競争が起こるのではないかというような懸念があると思いますが、大丈夫なのでしょうか。

山内弘隆氏

山内 歴史的に見ると、日本の電力会社では、過去に激しい競争がおこなわれた時代がありました。「電撃戦」と呼ばれた過当競争で、およそ3回起こっています。まず、大正時代に起こった火力発電の競争。3つの電力会社が苛烈な競争を繰り広げ、当時の東京市長だった奥田義人氏が仲介に入りました。その後、今度は水力発電で競争が起こります。さらに送配電技術が発達すると、今度は中部地域や関西地域で事業を営んでいた電力会社が関東へと進出し、関東の電力会社と競争することとなりました。鉄道においても、同一区間で複数企業が並行して自社の線路を敷く、運賃をどんどん割引いて最後は粗品も付けるなどの過当競争が起こったことがあります。

しかし、近年のインフラ事業の自由化は、ネットワークには競争をさせず、従来の独占を維持させておくという方法を採っています。日本の電力システム改革でも、ネットワークにあたる送配電網は従来の地域独占型を維持させ、そのネットワークを経由して電気を販売する事業や発電する事業で競争をさせるという設計になっています。これはジョスコウ&シュマレンシーの理論にも合致するものです。

英国は鉄道でも同様の方法を採っており、ネットワークに当たる線路網は一社が独占し(2002年までレールトラック社、現在はネットワーク・レール社)、その上を各社の列車が運行するという仕組みになっています。英国のその試みはなかなか上手くいってはいないようですが、エネルギーについては、前述したような運用に役立つ技術が発達していることから、適正な競争環境を構築できるのではないでしょうか。

―災害時の対応に関してはいかがでしょう。自由化は影響してくるのでしょうか。

山内弘隆氏

山内 そうですね。たとえば電力システムの改革では、これまで同一組織内で垂直的に統合していた業務を、発電・小売・送配電に分割しました。かつての垂直統合的な業務の進め方は、経済学では「組織の経済学」と言いますが、組織内の別部署と共に業務を進めることで、摺り合わせを容易におこなうことができます。たとえば自動車メーカーが新しい自動車を作りたいと考えた時、望む強度と形状のフロントガラスが市場にすでにあるとは限りません。そこで組織内の別部署と共にフロントガラスを開発すれば、安いコストで製造でき、うまく摺り合わせることもできます。しかし、組織を分割したことで新しい事業者と協業することが必要となれば、摺り合わせがうまく行くとは限りません。

今年の冬、東京電⼒圏内では積雪で太陽光発電の出力が低下し、さらに火⼒発電が故障して、電⼒不⾜のリスクが⾼まりました。あの時は電力広域的運営推進機関(通称:広域機関)が他地域の電⼒会社へ電⼒融通を指示して事なきを得ましたが、あれこそ摺り合わせが必要な場面です。同⼀組織内ではなくなったことで、そうした摺り合わせがいつも上手くいくだろうかという懸念はあります。特に、今後さらに競争が進み、さまざまな事業者が新しく参⼊してくればどうなるでしょうか。

そのためにも、太陽光発電など変動性の高い電源の予測値を発電計画に取り入れるタイミングや手法についてなど、スムーズな摺り合わせを促すための制度を現在議論しています。2018年6月に起こった大阪府北部地震の際は、全国からガス技術者が関西に集まり、復旧に尽力しました。市場の競争を進めつつも、あのようなスムーズな摺り合わせができる関係をどこまで残していけるかということが自由化の課題になっていくでしょう。

―後半で

【インタビュー】「電力・ガスシステム改革の評価とこれからの課題」―山内弘隆 氏(後編)

公共経済学や公益事業論を専門とし、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会(以下、電力・ガス基本政策小委員会)でも委員長を務める山内弘隆氏のインタビュー。前編サイト内リンクを開く「エネルギーの自由化はなぜ必要なのか?」に続いて後編では、電力・ガスシステム改革の現状についての評価、残された課題や今後必要となる施策などについてうかがいました。

電力システム改革後、スイッチング率はフランスを上回り評価すべき数字

―電力・ガスシステム改革の現状をどのようにご覧になっていますか。

山内 電力については2016年4月に小売全面自由化が、都市ガスについては2017年4月小売全面自由化がおこなわれました。電力では、いわゆるスイッチング率を指標として見ると、まだまだじゅうぶんではないという議論もあります。しかし、市場全体の13%ほど(家庭用8.4%、産業用5.6%)という現在のスイッチング率は、電力自由化後に徹底的な競争促進策を採った英国に比べれば低いものの、フランスと比較すれば上回っています。これは評価すべき数字だと思います。

日本では、急進的な政策は一般的に好まれず、改革も慎重を期す傾向があると思います。そのような慎重な施策で10%超というのは、妥当な数字ではないでしょうか。企業で考えてみれば、売上高が10%減少するというのは大きな数字です。それだけの契約が旧電力会社から新電力会社へと移行したのです。旧電力会社は市場の圧力をかなり感じているのではないでしょうか。

もうひとつ指標となるのは、事業者の新規参入状況です。電力の場合、市場が大きいこともあり、新規参入事業者はかなり多く、新しいビジネスが育っていると言えるでしょう。全面自由化から1年半が経過し、撤退する事業者も出始めてはいますが、これは市場を見通すことが可能になってきたということです。今後は、きわめて新しいアイデアを持つ事業者や、イノベイティブな経営や販売手法を採っている事業者が伸びる段階に入るのでしょう。

―新規参入の電力会社でシェアを獲得しているのは、どういった企業なのでしょう。

山内 まず、顧客とのチャンネル、コンタクトポイントを元々持っている企業です。たとえば低圧部門の新電力会社として多くのシェアを獲得しているKDDIは、携帯電話の機種交換などでショップを訪れた顧客に対し、待ち時間に電力の営業をしているそうです。ガス大手各社も電力分野に参入していますが、これらの企業も、保安検査で顧客宅を訪問するというコンタクトポイントを持っています。

実は、ガスシステム改革を議論する際、実際の現場を見る必要があると考え、東京ガスの子会社ライフバルの保安検査に同行したことがあります。一人暮らしの高齢者などにとっては、自宅にやって来る保安検査のスタッフは何でも頼める相手という認識で、壊れたものの修理や電球交換なども相談するのです。その様子を見た時、電力自由化が実施された暁にはガス会社は多くのシェアを獲得できるのではないかと予想しましたが、実際にそうなりました。

さらに最近は、対面販売だけでなく、インターネットを通じた顧客への営業も盛んになりつつあるようです。それだけ需要家が「電力自由化」とは何かを理解し、スイッチングの方法が分かるようになったということです。KDDIはこの動きを重視し、自社サイト内に電力に関するコンサルティングサイトを開設して電気の使い方と電気料金のアドバイスをおこなっています。また、電気と他のサービスをバンドリングしたプランもかなり顧客を獲得していますね。

ガスシステム改革がもたらすのは最も効率的な供給方法と技術革新

―ガスについてはいかがでしょうか。

山内 ガスについては、数字を見てもまだ新規参入事業者の数がじゅうぶんではないとの見方もあると思います。ただ、ガス機器の販売や機器のメンテナンスを安価にする事業者の登場など、競争の効果は現れつつあると感じます。

―電力とガスは性質の異なるものですから、一口に「自由化」と言ってもなかなかパラレルには進まないということでしょうか。

山内弘隆氏

山内 そうですね。まず、全国に送配電網が張り巡らされている電力と、極めてローカルなネットワークしか存在しないガスでは、売り方や新規事業者の参入方法も当然異なってきます。

2つ目は供給工程の違いです。たとえば都市ガスの場合、上流工程には海外のガス田があり、ガス事業者はそこで採掘したガスを自社の船で日本まで輸送して、ネットワークを経由して供給します。特に日本のガス事業者のガス専用船の運用などは、海外の有名大学でケーススタディとして研究されるほど特徴的な仕組みです。さらに現在では、日本のガス事業者はガス田への投資もおこなっています。非常に垂直統合が進んだ産業ではないかと思いますし、その意味では、調達から輸送・蓄積・供給というガス産業の一連の流れは、電力より参入ハードルが高いのかもしれません。現在、ガスの輸入基地を他企業へと開放する制度改革を進めていますが、ガス輸入基地は各企業の私的財産でもあり、どのように開放するかという点は議論の分かれるところです。また、電力のような卸売市場が存在しておらず、今後、市場の開設をおこなう必要も生じるかもしれません。

ただ、ガスは都市ガスとプロパンガス(LPガス)の競争、またオール電化との競争をおこなっており、その観点ではすでに競争が起こっているとも言えます。そうした実態についても評価すべきです。

今後、ガスのシステム改革を通じて、最も効率的なガスの供給方法が模索されていくでしょう。ガス管というネットワークを敷いて集中的に供給する都市ガスのシステムは、人口が集中している地域でしか成立し得ないものです。将来的には、人口減少によって人口密度が下がった地域では、シリンダーでガスを輸送するプロパンガスの方が効率的だとして、ガス管による供給が廃止されるとことも起こるかもしれません。

もうひとつ、ガスシステム改革において抑えておくべきポイントは、ガスでも技術革新が起こっているということです。先日発表された第5次エネルギー基本計画では、水素を将来の主力エネルギー源のひとつにしていくことが明記されましたが(サイト内リンクを開く「新しくなった『エネルギー基本計画』、2050年に向けたエネルギー政策とは?」参照)、ガスは水素と高い親和性を持ちます。そこで、たとえば再生可能エネルギーで電気を作りすぎた時に、その電気を使って水素を作りガス管を通じて供給するという実験もおこなわれています。また、ガスから水素を作る動きもあります。こうした技術革新も、自由化の中で進んでいくことを期待しています。

細やかなチューニングをおこないながら、少しずつエネルギーシステム改革を進めるべき

―現在残っている課題は何でしょうか。

山内 適切な競争を成立させるための制度設計です。先ほどお話したガスの卸売市場もそうですが、市場をうまく利用しながら適切な競争ができるよう、議論を進めています。

たとえば、市場の競争が激しくなりすぎてしまうと、設備への投資インセンティブが削がれてしまい、長期的なエネルギーの安定供給ができなくなってしまいます。特に電力については、日本では節電が進んで電力使用量がだんだん減っていることもあり、投資へのインセンティブが働きづらくなってしまいます。しかし、将来に向けて、大規模な電源への投資は継続される必要がある。どのようにして投資インセンティブを確保していくか、考えていく必要があるでしょう。

電力では、ネットワークに関しても同様の問題があります。前編で申し上げたように、日本や主要国では一社がネットワークを独占するという設計になっています。そのため、たとえ発電側に再生可能エネルギーなどの分散電源が増えたり、電力広域的運営推進機関(通称:広域機関)が「あるべきネットワークの姿」を定義したとしても、ネットワーク事業者がそれに応えてネットワークを構築する必要は基本的にはありません。そこで、ネットワーク事業者にインフラ投資をするインセンティブを与え、維持していくことが重要になります。これはEUで問題になっている点で、日本でも何らかの形で取り組む必要が出てくるでしょう。

さらに、作り置きができないという特性を持つ電気を市場に載せた上で、発電と消費の同時同量を実現し、安定供給を担保する必要があります。そのためには、どの時点でどれだけの電気が必要か、あるいはどれだけの需要があるのかといったことを効率的に組み合わせる、さまざまな装置や仕組みが必要です。そこで現在「容量市場」や「需給調整市場」、「環境価値市場」などの市場を作ることで補完をしようとしています。まるで金融分野のようですが、実は、電力取引はほぼ金融取引に近づいています。英国のOvo Energyは小売のプライシングとサービスで勝負している電力会社ですが、経営者は金融出身とのことで、おそらく金融分野で培った調達ノウハウを活かしているのでしょう。

とはいえ、全体的に見れば、日本の電力・ガスシステム改革は極端に振れることなく、うまく調整して進めることができていると捉えています。今後も、細やかなチューニングを行いながら、電気の特性や技術に通じた専門家と知恵を出し合って制度設計をしていくことが必要になるでしょう。そのような専門家は旧電力会社内にいることが多く、電力システムをトータルで見ることができます。そうした人材と、制度設計や市場構築ができる人材がきちんとタッグを組まないと、電力市場の構築は成功しません。日本の政策は慎重だと先ほど申し上げましたが、それでいいのではないかと私が考えるのは、エネルギーにはこのような難しさがあるためです。エネルギーシステム改革は、段階的に少しずつ進めるという方法が適しているのではないかと思います。

中部電、不動産事業を強化 日本エスコン持ち分法適用会社に

中部電力は28日、中堅不動産開発会社の日本エスコンの株式を取得し、持ち分法適用会社にすると発表した。日本エスコンのノウハウを活用し、不動産事業を強化する。電力小売りの全面自由化で競争環境は厳しさを増しており、事業の多角化を進める。

日本エスコンの大株主の個人投資家らから、発行済み株式の約32%にあたる2298万株を264億円で買い取る。取得予定日は9月7日。取得後は日本エスコンの業績が中部電の連結決算に反映されるようになる。

両社は業務提携推進委員会を立ち上げる。同委員会では▽次世代型スマートハウスの共同研究▽中部電グループの遊休地の共同開発▽日本エスコンの開発物件の電気設備工事を中部電グループに優先的に発注▽街づくり事業など広範囲の不動産開発の共同実施――などを検討する。

中部電は2020年代後半に連結経常利益を2500億円(18年3月期は1285億円)にする中期目標を掲げる。利益を倍増するには電力やガス以外の柱を育てる必要がある。今回の資本提携をテコに不動産事業を拡充し、収益の拡大につなげる狙いだ。

一方、今回の出資に関連し、市場関係者からは「高値づかみ」との声も聞かれる。

日本エスコン株の取得額は1150円と、28日の終値(717円)より6割高い。日本エスコンの6月末時点の1株当たり純資産は326円。取得額を基にしたPBR(株価純資産倍率)は3.5倍と、東証1部に上場する不動産業の平均(1.4倍)を大幅に上回る。PBRが大きくなればなるほど、割高な出資になる可能性が高まる。

日韓は新ステージと言える状況だ」 北陸電力会長 北陸3県と韓国の経済連携促進会議

 北陸3県と韓国の企業トップや行政関係者らが両国経済の現状を話し合い連携を議論する「北陸(日本)・韓国経済交流会議」が27日、福井市で開かれた。北陸経済連合会の久和進会長(北陸電力会長)は「朝鮮半島の緊張緩和などを受け、日韓は新ステージと言える状況だ」と強調し、民間レベルの経済連携の促進を訴えた。

<< 下に続く >>

 会議は平成12年から始まり、今回で19回目。日本側約100人、韓国側約40人が参加した。

 韓国側は韓国の文在寅大統領が創設を提唱した日本を含む北東アジア6カ国と米国による「東アジア鉄道共同体」構想について言及。日朝関係が正常化すれば、北陸の港から釜山を経て陸路で欧州まで物資を運ぶ物流ルートが開ける可能性があると指摘した。

 次回は韓国で開催する予定。

新電力プラン「つくばでんき」リリースから わずか10ヶ月で契約数1,000件を突破

新電力プラン「つくばでんき」リリースからわずか10ヶ月で契約数1,000件を突破

つくばエナジー株式会社(本社:茨城県つくば市代表取締役:森 和彦)は、地域創生を目的にした新電力プラン「つくばでんき(URL :https://tsukubaene.jp/)」の累計契約数(注)が2018年8月20日をもちまして1,000件を突破したことをお知らせします。

2017年11月のサービスリリースからわずか10ヶ月で契約数1,000件を突破したことは、茨城県南西マーケット且つ事業用サービスという規模・成長速度を考慮すれば、前例のないスピードとなっております。

短期間での1,000件突破は、日頃よりご愛顧いただいているお客様、パートナー企業様のご協力のおかげであり、心から感謝申し上げます。

つくばエナジーは2017年の開業以来、つくば市を中心に茨城県域における地域創生プラン「つくばでんき」という新しい電力サービスを通じて地域社会の豊かな暮らしや街づくりへの貢献を目標に、お客さまから信頼される企業を目指し事業活動に取り組んでまいりました。

また、サービスリリースから早い段階でのパートナー企業様の参画、安心の供給品質とお得な価格というメリットをご理解いただき地域創生に共感いただくお客様のご協力により契約数が急速に伸びて参りました。

以上の結果、多くのお客様にサービスをお選びいただき、つくばでんきサービスリリースから、わずか10ヶ月で1,000契約を突破することができました。

私たちは、地域創生・地域活性化こそが企業価値であり、また、そのことによって地域社会に貢献するという考えのもと、インフラを通じて地域の皆さまのニーズにお応えしてまいります。地域創生・地域活性化の更にその先へ。電力サービスで新たな価値を提供する、つくばエナジーのチャレンジは続きます。

(注)マッチング(託送供給契約成立)件数

<サービス参考>

【URL】https://tsukubaene.jp/

つくばでんき 3つの特徴

1.とっても簡単:お申込みだけでご利用いただきます。

2.電気の品質はそのまま:でんきの品質やご利用環境は変わりません。

3.お得なプラン:現在の電気代が更にお安くなるプランをご提案します。

つくばでんきとは

これまでと変わらない品質で、低価格な電気代を実現し、コストカットに貢献します。

更に、地域を元気にするために、つくばエナジー株式会社が地元のさまざまな団体に

ご利用料金から得られる収益の一部を寄付や協賛をして、地域を応援します。

【「つくばでんき」サービスプラン】

・つくばでんきビジネスプランH

・つくばでんき動力プランH

つくばエナジー株式会社について

当社は、つくば市を中心に茨城県域における地域創生プラン「つくばでんき」という

新しい電力サービスを通じて地域社会の豊かな暮らしや街づくりへの貢献を目標に、

お客さまから信頼される企業を目指しております。

【会社概要】

会社名:つくばエナジー株式会社

所在地:茨城県つくば市竹園二丁目8番地6つくしビル2F

代表者:森 和彦

設立:2017年10月

URL:https://tsukubaene.jp/

事業内容:電力事業、付帯事業、モバイル事業、ヘルスケア事業

【本リリースに関するお問い合わせ先】

つくばエナジー株式会社

E-mail:info@tsukubaene.jp

配信元企業:つくばエナジー株式会社

電力・ガス小売事業者向けに、ユーザーデータを活用したデジタルマーケティングを可視化するクラウド型ソリューション『EMAP(イーマップ)』の本格販売開始

大手電力や新電力が続々導入決定!

<下へ続く>

 ENECHANGE株式会社(本社:東京都千代田区代表取締役会長 城口洋平、代表取締役社長 有田一平 http://enechange.co.jp/)は、電力・ガス小売事業者向けにデジタルマーケティングクラウド型ソリューションを『EMAP』(イーマップ:Energy Marketing Acceleration Platformの略)としてリニューアルを行い、これまで一部の小売事業者のみにご利用いただいてきたサービスを、広く販売することにいたしましたのでお知らせいたします。

エネルギー業界の潮流として「4つのD※」に注目が集まる中、クラウド型ソリューション『EMAP』はその1つである「デジタル化」で、電力・ガス小売事業者をサポートするサービスを提供しています。小売事業者が顧客管理などの業務を推進するうえで抱える大きな課題に、コスト・スピード・マーケティングの3つがあります。多くの小売事業者は、システム導入に膨大なコストを投下しているにも関わらず、スピーディなシステム開発が行われていません。また顧客から得られる有益かつ膨大な顧客データや電力消費データを、管理・分析し自社のマーケティングに活用しきれていないという現状があります。ENECHANGEは、これまでエネルギーのプラットフォーム企業として多くの電力・ガス会社との接点があり、小売事業者が抱える課題を丁寧に抽出してきました。さらに月間280万以上のユーザーが利用する電力・ガス比較サイト「エネチェンジ」で蓄積した分析データやノウハウを集結することで、いち早く市場ニーズを反映し、提供したサービスを最適化し続けることができることが最大の特徴です。

※ENECHANGEが注目する「4つのD」は、Deregulation(自由化)、Digitalisation(デジタル化)、Decentralisation(分散化)、Decarbonaisation(脱炭素化)です。

クラウド型ソリューション『EMAP』のラインナップ

一部の小売事業者向けにOEM提供してきたサービスを拡充し『EMAP』としてリニューアルいたしました。これによりより多くの皆様に必要なサービスを最適化し導入していただくことが可能になりました。

『EMAP Simulation(診断サービス)』は、電力・ガス比較サイト「エネチェンジ」で洗練されたENECHANGE独自の電力消費予測アルゴリズムによる精緻な料金シミュレーションができるプラットフォームで、電力自由化前の準備期である2016年1月から東京電力エナジーパートナー株式会社様にいち早く採用いただき提供を開始。現在もご利用いただいているサービスです。

   ※東京電力エナジーパートナー様の料金プラン試算ページ

都市ガス大手の東京ガス株式会社様には、『EMAP Simulation』に加え、高コンバージョン率の受付フォーム『EMAP BASE(申込みフォームサービス)』と、それら2つからのアクセス状況をリアルタイムに可視化するサービス『EMAP BRAINS(アクセス解析支援)』の3つを導入いただいております。『EMAP BRAINS』は、『EMAP BASE』と『EMAP Simulation』の導入先に提供しているプロダクトで、通常週に1度や月に1度などのペースで定例会を設定し週次・月次報告を行っていたものをリアルタイムで確認できるようにしたツールです。これにより小売事業者内の全担当者が同レベルでタイムリーにユーザーデータを把握できるため、業務の効率化を図ることができるようになります。

   EMAP BRAINSの画面イメージ

※『EMAP』各サービスの詳細はコチラ(https://enechange.co.jp/topics/emap-service-intro/)からご覧いただけます。

代表取締役社長 有田 一平のコメント

ENECHANGEでは2016年の電力自由化開始時より料金シミュレーション、申込み受付サイト、顧客管理システム、アクセス解析支援などのサービスを電力・ガス小売事業者の皆さまに提供してまいりました。電力自由化から2年が経ち事業者間の競争が激化する中、本格的なデジタルマーケティングとそれに伴うシステム導入のニーズが高まっています。この期により多くの事業者の皆さまにENECHANGEのクラウド型ソリューションをご利用いただけるよう、EMAP(Energy Marketing Acceleration Platform)として本格的な販売を開始します。「4つのD※」の2つ目のD「デジタル化」分野においては、スマートメーター解析サービスSMAPと、デジタルマーケティング EMAPの両輪で、展開して行きたいと考えています。

ENECHANGE株式会社

コア技術である「ENECHANGE TECHNOLOGY」を通じて、世界の「エネルギー革命」を推進していきます。

名称  :ENECHANGE株式会社

所在地 :〒100-0004 東京都千代田区大手町2-6-2 日本ビル3階

代表者 :代表取締役会長 城口洋平、代表取締役社長 有田一平

設立  :2015年4月

事業ドメイン:エネルギーマネジメント事業、エネルギーテック事業

URL  :https://enechange.co.jp/

『EMAP』プロダクトに関するお問い合わせ先

ENECHANGE株式会社 エネルギーテック事業本部 

TEL:03ー6774ー6601

Email:energytech@enechange.co.jp 

電力・ガス自由化、競争市場をつくる規制運用上の問題は? 政府が中間報告書

電力・ガス取引監視等委員会は、電力事業・ガス事業の小売全面自由後、それぞれ2年余、1年余が経過した競争の現状を踏まえ、電力・ガス市場における競争政策上の課題などについて検討してきた研究会の報告書(中間論点整理)を公表した。

この「競争的な電力・ガス市場研究会」では、今後、競争の促進を通じて、料金の低廉化をはじめとする自由化のメリットを最大化していくための規制運用上の課題、また、電気の経過措置料金解除の判断方法について、競争政策に関する理論的見地からの議論を行ってきた。同報告書は、2017年10月から8回にわたる、その議論をまとめたものだ。

今後、同報告書を踏まえ、経済産業省、特に、電力・ガス取引監視等委員会において、競争政策の観点からの具体的な政策措置が着実に検討・実行されることが期待されている。

小売市場、「長期契約」はどう規制する

小売市場における競争政策上の課題として、長期契約による市場閉鎖、旧一般電気事業者による差別的廉売、セット割引のみによる大幅な割引、全量供給を条件とした割引をあげている。

まず、長期契約による競争への影響は、自由化されたエネルギー市場における重要な検討課題だとした。ガス市場(電力市場でも一部)において存在が指摘される、長期契約を高額の違約金によって担保するような取引慣行は、事業法上は、需要家のために特別の投資を行った場合など例外を除けば、正当化は困難だ。このため、市場支配的事業者や市場における有力な地位にある事業者による長期契約に関する規制のあり方について、さらなる検討を求めた。

旧一般電気事業者による「取り戻し営業」、差別的廉売

一部地域の旧一般電気事業者において、新電力にスイッチングしようとする顧客や公共入札を行う顧客など特定の顧客に対し、非常に安い価格で小売供給を提案する「取り戻し営業」の事例が指摘されている。

これは、水力や石炭、原子力など可変費が安いベースロード電源について、固定費を少額のみ賦課することによって可能となっていると考えられる。一方で、新規参入者には、ベースロード電源の新設は一般に困難であるため、このような旧一般電気事業者の営業活動に対抗することは、非常に難しい。

電源アクセスに関するイコール・フッティング(対等の立場で競争できるよう条件を同一化すること)が確保されていない現状を踏まえ、こうしたケースを主に念頭に置きつつ、旧一般電気事業者が差別的廉売を行う場合における適切な規制を現行事業法のガイドラインなどで行うことを検討する必要があるとした。

電力・ガス取引監視等委員会は、電力事業・ガス事業の小売全面自由後、それぞれ2年余、1年余が経過した競争の現状を踏まえ、電力・ガス市場における競争政策上の課題などについて検討してきた研究会の報告書(中間論点整理)を公表した。

この「競争的な電力・ガス市場研究会」では、今後、競争の促進を通じて、料金の低廉化をはじめとする自由化のメリットを最大化していくための規制運用上の課題、また、電気の経過措置料金解除の判断方法について、競争政策に関する理論的見地からの議論を行ってきた。同報告書は、2017年10月から8回にわたる、その議論をまとめたものだ。

今後、同報告書を踏まえ、経済産業省、特に、電力・ガス取引監視等委員会において、競争政策の観点からの具体的な政策措置が着実に検討・実行されることが期待されている。

「8割が再エネ」「初年度から営業黒字」――やまがた新電力の取り組み

 山形県は、2011年3月に発生した東日本大震災の際、エネルギーの安定供給や安全性について、他の地域以上に危機感を強く感じた県の一つとなった。日本海側のため、地震津波による深刻な被災は免れたものの、県内は大規模な停電の影響を受けた。その後、福島第一原子力発電所の事故では、事故の程度と風向き次第では、放射線関連の影響を強く受ける恐れが生じた。

 この危機感から、山形県では、県内に安全・安心なエネルギー源を多く導入し、県内で使いこなせないかと考えた。その狙いに合う電源として、再生可能エネルギーに着目した(図1)。地域に分散して導入しやすく、かつ、安全・安心という目的に適う。こうした目標を実現していくために、翌年の2012年に県のエネルギー戦略を策定した。再エネを中心とする県内への新たなエネルギー源(熱源+電源)の導入では、2030年度末までに、101.5万kWの目標を掲げている。これは、ほぼ原発1基分に相当する(県のエネルギー戦略の詳細については別項参照)。

図1●山形県内に新設された再生可能エネルギー発電所の例

上は酒田港近くに立地する出力約16MWの風力発電所と約28.5MWの太陽光発電所、左下は村山市にある県営の出力1MWの太陽光発電所、右下は最上町に立地する出力1MWの木質バイオマスガス化発電所(出所:上は酒田港リサイクル産業センター、左下は山形県、右下はZEエナジー

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新電力で再エネ電力を地産地消

 再エネ発電所の導入が進めば、次はいかに地元の再エネ電力を、地元で使いこなすかという地産地消がカギになる。そこで、山形県では、県内の経済界に呼びかけ、地元に新電力を設立し、県内の再エネ発電所から電力を調達し、その電力を県内の施設や企業の事業所に供給していくような地産地消を目指すことにした。2016年4月に始まった電力小売りの自由化が、こうした事業を可能にした。

 当初の県のエネルギー戦略の最大の目的だった「安全・安心な電源」からの「電力の安定供給」に加えて、新電力を設立すれば東北電力よりも低価格の電力供給による「電力コストの削減」、関連業務のための「雇用」にも期待できる。

 こうして山形県や地元企業が出資して設立したのが、やまがた新電力(山形市松栄)である。調達先には、ベース電源となるバイオマス発電所に加え、日中に発電量が増える太陽光発電所を多く確保した。同社では、これらの取り組みを、山形の産官が一体となって進めている利点があるとしている。

 ここでは県の協力が大きく、2016年の事業開始後から、供給先を多く確保でき、安定して事業を立ち上げることができた。それほど多くの電力を使わず、しかも、夕方以降はほとんど電力を消費しないタイプの公共施設――学校や、総合支庁をはじめとする県有や県内市町村の様々な事務関連施設――を中心に電力の供給先を確保し、新電力の経営を安定させやすい体制を構築したことが大きかった。夜間や土日祝日に電力を多く使うタイプの施設が供給先に入ると、新電力の運営の負担が増す。夕方から早朝までの負荷が少ない学校や総合事務所は、ベース電源と太陽光発電による電力で多くを賄う計算が立てやすいため、新電力の収益の早期安定を目指しやすくなる。

 調達先の太陽光発電所についても、県内初のメガクラスとなった発電所など、県内のその後の大規模な太陽光発電所の参考になる開発や運営を目指した発電所を含んでいる。

 県の浄化センター(天童市大町)の敷地内に立地する出力1995kWの太陽光発電所は、県内初となったメガクラスの太陽光発電所である(図2)。開発・運営しているのは、下水処理施設の維持管理などを手がける山形環境エンジニアリング(寒河江市高田)の子会社、POWER E NEXT(パワー・イー・ネクスト、天童市中里)である。

 ここでは、太陽光パネルは3種類を導入し、パネルを固定する角度も20度、30度、40度に分けている。太陽光パネルを固定する基礎と架台も2種類を使い分け、比較的積雪が多く、かつ日照時間の少ない地域において、太陽光パネルの違いや設置角の違いがどの程度、発電などに影響するのかを測定するためだ。県内で太陽光発電所を開発する企業に対して、検討材料を提供するという狙いがあるという。

図2●浄化センター内の太陽光発電

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山形県から土地を借り、やまがた新電力の出資者の1社であるPOWER E NEXTが開発・運営(出所:上はPOWER E NEXT、下は日経BP

 県の企業局が、村山市にある旧・園芸試験場の土地を活用して開発・運営している出力約1000kWの太陽光発電所も、3種類の太陽光パネルを導入し、異なる設置角で固定し、同じように後続の開発の参考にしてもらおうという意図がある(関連記事)。

県内に導入された再エネ電源を、いかにうまく使いこなすという役割を担うやまがた新電力は、事業開始から2年以上を経過している。現在は高圧の電力を取り扱い対象としている。

 資本金は7000万円で、県が33%(約2340万円)を、残りを県内の18社が出資して設立された。県によると、「エネルギー戦略の具現化が目的で、それに資する経営をしてもらいたい。このために、特別決議に拒否権が発動できる出資比率とした」としている。

 やまがた新電力の特徴は、調達先の再エネ電源の多さにある(図3)。調達先の電源の約8割を再エネ発電が占めている。また、業務は出資企業で分担して受託し、専従者を置かず、運営コストを抑えていることも特徴となる。

 調達先となる再エネ発電所も、当初から合計出力29MWと多く確保できていた(図4)。ベース電源となるバイオマス発電では、鶴岡市にあるバイオマス発電所の出力1600kWのうち、900kW分を購入している。このほかでは、太陽光発電所が20カ所・合計出力2万2879kWあり、日中には太陽光発電が多く加わる。2017年4月にはベース電源となる水力発電所が、2018年8月には出資者の大商金山牧場が運営している出力500kWのバイオガス発電所も加わる。調達先の合計出力は3万1500kWに増えた。

図3●調達先の約8割が再エネ

再エネ比率の高さが特徴(出所:やまがた新電力)

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図4●調達先(上)と供給先(下)

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供給先の増加に合わせて、再エネ発電所の調達先を増やしていく(出所:やまがた新電力)

 これに対して、2018年8月時点で供給先は118施設・合計約1万8196kWと、現状では調達電力が大幅に上回っている。このため、太陽光発電所と風力発電所の調達先は、事業開始以後、増やしていない。供給先は、県有施設が90カ所、市町村有施設が17カ所。2018年8月に大商金山牧場の施設が1カ所加わり、民間施設が11カ所に増えた。

 現在の課題は、供給先を増やすこととなる。調達先の再エネ発電所の合計出力が、供給先の合計に比べて2倍近く多い。この再エネ発電所からの供給を多く確保できている一方、供給先の増加が十分には追い付いていない。

 そこで、2018年度からは、代理店制度を開始した。従来の公共施設の供給先に加えて、企業の施設の供給先を開拓していく。やまがた新電力への出資企業のうち6社(山形パナソニック、大商金山牧場、野口鉱油、メコム、POWER E NEXT)と、出資企業の親会社1社(山形環境エンジニアリング)が代理店の活動を始め、企業の施設などの供給先を拡大していく。

 出資企業の施設では、低圧の電力の施設が多いため、やまがた新電力からの買電に切り替えている企業は3社にとどまっている。2018年秋から、企業向けの低圧の供給も開始する予定で、新たな需要を取り込んでいく。

新電力の運営の中で、検討すべき課題も出てきた。一つは、「FITのインバランス特例制度」に関するものだった。

 電力小売りが自由化される以前は、FITに基づく再エネ発電電力は、一般電気事業者(山形県の場合は東北電力)が全量を買い取っていた。これに対して、電力小売り自由化後、新電力などの小売電気事業者が調達契約を結んだ再エネ発電所については、発電電力のすべてを小売事業者が買い取ることを前提としている。

 望ましいのは小売電気事業者ごとに、その需給を同時同量に調整していることだが、現実的には小売電気事業者1社の単位で実現することは難しい。そこで、小売電気事業者は事前に提出した調達先の発電量と需要量の計画と、当日の実績を30分単位でズレを3%以内に抑えれば良いという決まりがある。

 もし30分単位の需給の一致を達成できなかった場合には、一般電気事業者がその代わりに不足する電力を供給する、あるいは供給過剰となった電力の分だけ需給調整用の火力発電を炊き減らしするといった対応を取る必要がある。この状況が生じると、小売電気事業者には、インバランス料金の支払いというペナルティが課される。

 この需給の一致を実現するには、需要と供給の予測や電力卸市場の活用など専門的な知見が必要になる。そこで、多くの新電力などの小売電気事業者では、複数社がまとまり、より大きな単位で調整して実現しやすくしている。こうした新電力などの小売電気事業者のグループを、バランシンググループ(BG)と呼ぶ。できるだけ多い小売電気事業者によるBGの方が、この調整は容易になる。

 こうしたBGに組み込まれた新電力などの小売電気事業者による、FITに基づく太陽光・風力発電所からの電力調達に関する制度が「FITのインバランス特例制度」である。特例制度(1)と、特例制度(2)という二つの種類があり、再エネ発電所による発電量の計画の作成、インバランスが生じた際のリスクの取り方や精算方法などが(1)と(2)で異なる。

 大まかに、調達先の太陽光・風力発電所の発電量の計画は、特例制度(1)の場合は一般電気事業者が作成し、特例制度(2)の場合は小売電気事業者や再エネ発電所が作成する。

 この計画発電量と実際の発電量の差も、インバランスの対象となる。これも含めたインバランスとなった余剰あるいは不足分の電力に関する取引や精算は、一般電気事業者と小売電気事業者などの間でやり取りされる。最終的には、特例制度(1)の場合、回避可能費用によって精算される。一方、特例制度(2)の場合は、インバランス料金で精算される。

 特例制度(1)は、発電量の計画は一般電気事業者が担い、インバランス分の太陽光・風力発電電力は回避可能費用で精算される。この両方によって、インバランスのリスクなしに新電力が太陽光・風力発電電力を導入できるとされている。

 特例制度(2)は、発電量の計画を新電力が作成し、インバランス分の太陽光・風力発電電力はインバランス費用で精算される。再エネ発電量の予測や需給調整の実力を十分に備える新電力にとっては、こちらの方が望ましい。

 やまがた新電力は、特例制度(1)でスタートした。事業を始めてみると、特例制度(1)ならではの二つの要因によって、特例制度(2)だった場合の方が、想定していた以上に事業性が高まった可能性がある状況が生じているという。その一つは、インバランス時の精算に関するもので、やまがた新電力の場合、日中の太陽光発電電力と需要の差が大きい(図5)。この余剰分の太陽光発電電力の取引や精算に関して、特例制度(2)の利点が予想以上に多い状況にあるという。

図5●日中の太陽光発電電力が余る

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3カ月ごと(上)と6月のある日(下)の需給の状況(出所:やまがた新電力)

 もう一つは、東北電力による太陽光発電電力量の計画と実際の発電量との乖離が、予想よりも大きいことだった。実際に比べて、東北電力による計画値は、大幅に低いことが少なくなかった。これも特例制度(2)であれば、より実態に近い発電量を自ら計画でき、事業性がより高まった可能性が高いとしている。

 この太陽光発電量の計画値に関しては、その後改善されたとしている。また、やまがた新電力では、出資会社に委託している総務や経理などの業務を自社内に取り込むことを検討している。これが実現すれば、同社にとって初めての専従者を採用することになる。

やまがた新電力の収支面では、供給先と同じように、BGなどへの支払いや精算は翌月、調達先の再エネ発電所への支払いも翌月となっており、資金サイクルの期間に極端な差はない構造になっているという。ただし、FITの賦課金分の収入は、3カ月後と期間が長い。

 こうした状況の中、同社では、資金については、金融機関からの融資も受けながら回しているとしている。

 2016年度は営業利益が約4100万円の黒字で(図6)、2017年度は約5500万円と黒字が大幅に拡大した。

図6●初年度から営業利益を黒字に

専従者を置かない体制が寄与した(出所:やまがた新電力)

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 供給先の増加による収益の増加が課題となる中、専従者なしで運営するなど最小限の体制で運営していることが奏功しているとしている。

 同社の場合、県が最大株主という公益性の強さに特徴があり、営業利益の確保は重要だが、山形県全体の産業や雇用、電気料金の低減といったより広い還元が重要となっているという。

大雪で発電量ゼロの太陽光発電所も

 山形県は、冬には雪が積もる地域である。その中で、調達先の多くが太陽光発電所となっている(図7)。積雪時の電力調達や供給は、雪によってどの程度、影響を受けているのだろうか。

図7●多く積雪した時の浄化センター内の太陽光発電所の例

太陽光パネルを固定する角度によって、パネル上の積雪状況が異なる。この時の積雪状況では、奥は設置角が30度で、パネル上から雪が滑り落ちている一方、手前の20度のパネル上には滑り落ちずに残っていた(出所:POWER E NEXT)

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 冬季はまず、電力需要が夏より多くなる。暖房で電気を多く使うためである。そして、雪が積もると、調達先の太陽光発電所の多くで、太陽光パネル上に雪が積もることによって発電量が減ったり、中には、全く発電しなくなってしまう太陽光発電所もあった。

 特に、2017~2018年の冬は、日本海側の他の地域と同じように、例年より雪が多く積もる日が少なくなかった。しかも、内陸部などでは気温も低くなった。太陽光パネルの上に積もった雪が、低い気温の中で凍ってしまうこともあった。

 積雪地域の太陽光発電所では、住宅の屋根を大きく傾けて雪を滑り落ちやすくしているのと同じように、太陽光パネルを20度、30度、40度などと大きく傾けることによって、パネル上に雪が積もっても、滑り落ちやすいように設計されている。

 しかし、多い積雪と低温が重なり、太陽光パネル上で滑り落ちる前に、凍って固まってしまえば、なかなか滑り落ちなくなる。これによって、発電しない時間帯が、例年よりも多くなった調達先の太陽光発電所が多かった。

 こうした時に、太陽光発電電力の計画量と実際の発電量の差や、需要との差による不足分は、BGから購入したりインバランス料金を支払って賄う。この費用は、市場価格と連動している。ほぼ市場価格が安価な時期だったために、収支面で大いに助かったとしている。

 山形県が策定したエネルギー戦略は、今後20年間のエネルギー政策の基本的な枠組みを示す「エネルギー政策基本構想」と、この基本構想の実現に向けた今後10年間の具体的な政策の方向を示す「エネルギー政策推進プログラム」からなる。

 目指す姿は、再エネを中心としたエネルギー供給基盤を県内に整備し、エネルギーを安定供給できるようにするとともに、再エネを地域でうまく使いこなしていくことにある。再エネは地域に分散しやすい特徴があることから、関連産業の振興や地域の活性化にも期待している。

 記事冒頭でも述べた通り、再エネを中心とする県内への新たなエネルギー源(熱源+電源)の導入では、2030年度末までに、ほぼ原発1基分に相当する101.5万kWの目標を掲げている(図8)。

 2017年度末の時点で、2030年度末までに87.7万kWという電源導入の目標に対して、2017年度末時点で稼働済み(22.2万kW)と開発計画の決定分(23.4万kW)を合わせて45.6万kWと、目標の半分以上(52.0%)がすでに実現、または実現のめどがついている。

 計画では、風力発電の比重が大きい。再エネ発電の中でも、山形県風力発電に向く地域として知られる。全国有数の風況の良さが生きる。そこで風力発電を多く導入することを目指した。導入目標は、2030年度末までに45.8万kWと、太陽光発電の30.5万kWより大幅に多い計画を掲げている。ただし、風力発電は、候補地における長期にわたる調査が必要など、計画の開始から着工までに期間を要する。主に、風況の調査と、環境影響評価(環境アセスメント)の期間が長い。周辺地域の利害関係者との協議も長引く傾向にある。

 このため、2020年度までに31.2万kW、2030年度末までに45.8万kWという目標に対して、2017年度末時点で7.4万kW(稼働済みが2.0万kW、計画決定分が5.4万kW)で、進捗率は16.2%にとどまっている。開発計画自体は少なくないものの、開発期間が長いという特性ゆえに、稼働済みや開発計画が決定した発電所はまだ限られている。

 山形県では、こうした風力発電の導入促進策として、適地に関する情報公開のほか、県内の市町村と発電事業者が連携して事業化を目指している風力発電所に対する支援や、県による内陸部の適地における風況調査などを実施している。

 市町村と発電事業者が連携して開発している風力発電所への支援については、市町村にも主体的に取り組んでもらいたいという狙いから実施しているという。事業可能性調査(フィージビリティスタディ)への助成のほか、アドバイザーを派遣する。

 また、県のエネルギー戦略で想定している風力発電は、陸上を用地とする発電所だけとなっている。一方で、近隣の秋田県青森県では、洋上の風力発電所の開発が盛んになっている。そこで、山形県でも、洋上風力発電の導入可能性の研究に着手した。洋上の風力発電が実現すれば、風力発電の導入の可能性がより増える。

 開発計画が決定済みの陸上の風力発電所には、県による出力約6900kWの案件が含まれている。酒田市の十里塚海岸の遊休地を活用したもので、出力2300kWの風車を3基並べる。2019年5月ころに着工する予定となっている。

 この風力発電所は、東北電力との連系協議において、蓄電池の併設を求められた。出力変動の抑制を目的とするものとし、容量は約7000kWhを予定している。

 県によると、連系協議において、最終的には蓄電池を併設する要件が外されることになった。それでも、当初の計画通りに蓄電池を併設して運用する予定とする。今後、近隣地域で風力発電所を事業化しようとしている発電事業者にとって、実際の風況と発電量の関係だけでなく、出力抑制の参考になるデータも提供できる発電所になるとしている。

 導入計画量が多い一方、事業化までの期間が長い風力発電に変わって、導入計画の進捗率を引き上げているのは、やはり太陽光発電となっている。

 太陽光発電は、2020年度末までに22.8万kW、2030年度末までに30.5万kWという目標に対して、2017年度末時点で28.8万kW(稼働済みが18.3万kW、計画決定分が10.5万kW)となっている。進捗率は94.4%とほぼ達成が近づいている。

 バイオマス発電にも期待を寄せる。県内の土地の約7割は森林で、間伐材を燃料に使う木質バイオマス発電所がこうした地域に建てば、電源としての役割だけでなく、長年の課題となっている林業の活性化も引き起こせるのではないかと考えた。

 一方で、臨海部には酒田港があり、陸揚げ拠点として活用できることから、臨海部には、輸入材を燃料に使うバイオマス発電所の進出にも期待している。

 木質バイオマス発電所については、稼働済みが5カ所、開発中が4カ所ある(図9)。このうち山間部の県内産の間伐材を主燃料とする発電所は6カ所・合計出力20万kWある。現状では、この計画分の県内産材を確保するだけでもギリギリの状況が近づいているようだ。

 このほか、中小規模の水力発電についても、中小水力発電は、すでに2030年度末までに2.0万kWを実現できるめどがついた。

温泉組合が共同で給湯設備を導入

 計画では、電源だけでなく、熱源も対象としている。熱源については、電力の後を追う形で導入や活用を本格化していく。 木質バイオマス燃焼機器(ストーブやボイラー)に対する県の補助金もあり、例えば、バイオマス熱は2030年度末までに3.4万kWの目標に対して、2017年度末時点で2.9万kW(稼働済みが2.9万kW、計画決定分が0.1万kW)と進捗率は高い。

 このほか、熱利用については、FITの対象にならないこともあって、利活用研究から事業可能性調査の調査費、導入までの段階ごとに助成している。地中熱だけでなく、温泉熱、雪氷熱の利活用研究も支援している。

 温泉熱では、珍しい事例もある。鶴岡市湯野浜温泉組合の12施設がまとまり、共同の給湯設備を導入したことである(図10)。地域の温泉組合で共同設備を導入するのは、全国であまり例がないという。2016年度の環境省の事業で整備した。

図10●温泉組合がまとまり共同で給湯設備を導入

全国でも珍しい例という(出所:山形県

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 温泉旅館などの施設では、2種類の湯を使う。一つは温泉の湯、もう一つは給湯設備を通じたシャワーなどで使う湯である。温泉旅館では従来、温泉の湯は各旅館で沢水などの冷熱を使って適温に下げ、一方、給湯も各旅館で重油のボイラーで加温した湯を使っていた。

 これを、共同のシステムによって、給湯用の水との熱交換によって、温泉の60度の湯を適温の43度に下げながら、給湯用の水は15度から適温の40度に加温できるようにした。これによって、給湯用の重油ボイラーを不要にした。給湯用の湯は、配管システムで各旅館に供給する。

エナリス、上期は黒字化を達成 「クラウド型検針システム」を開発

2018年8月15日に行われた、株式会社エナリス2018年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

2018年12月期第2四半期(累計期間)P/L内容

2018年12月期第2四半期(累計期間)顧客区分別サービス実績

売上高の増減要因分析

営業利益の増減要因分析

第2四半期累計期間のコスト動向

法人需要家向けサービス(エネルギーエージェントサービス)の動向

新電力事業者向けサービス(小売電気事業者向け需給管理サービス)の動向(1/2)

新電力事業者向けサービス(電力卸取引)の動向(2/2)

バランスシートの状況

2018年12月期 決算見通し(P/L)

2018年12月期 決算見通し(四半期動向イメージ)

2018年12月期 決算見通しにおける期初との差異

2018/12期 KPI見通しについて

下期トピックス~クラウド型検針システムの提供開始 (8/2 プレスリリース)